民事再生法の解説

民事再生法の基本構造

民事再生法は、和議手続に代わる新しい再建型の手続である。
 その骨格は、和議であり、その枝葉として会社更生の手続が採用されているとイメージするとわかりやすい。
 再生手続も和議手続同様、無担保一般債権を手続の対象とし、再生計画の中でこの無担保再建の大幅なカットを行って、財務内容を改善することによって、再建を目指す手続である。

 

民事再生手続の利用目的

 1 企業の再建
   企業としての法人格を維持しながら原則として自力で再建を目指す。
 2 事業の再建
   M&Aの手法を利用して事業再建の図る。
 3 円滑な清算

 

再生手続の流れ

   再生手続の申立
      ↓
   保全処分(0〜2日)
      ↓
   手続開始決定(2週間)
      ↓
   監督委員の選任
        ↓
   債務者による債権者説明会(申立直後に債務者主催の任意の債権者説明会が実施されるケースが多い)
      ↓
   債権調査(届出、認否、調査期間)…債権の存否・額が決定される。
         異議が出された場合には、最終的に訴訟で解が図られる
      ↓
   債権届出期限(6週間)
      ↓
   債権認否書の提出(9週間)
      ↓
   再生計画案提出(3ヶ月+10日)
      ↓
   監督委員の報告書提出…監督委員は再生計画の内容の妥当性や計画遂行の可能性等について調査し、裁判所に報告書を提出する。この報告書は通常債権者に送付され、再生計画の賛否の資料に供される
      ↓
   債権者集会の召集決定(5ヶ月)
      ↓
   債権者集会の開催
      ↓
  裁判所による再生計画案の認可決定(6ヶ月以内の完了が目標)
      ↓
  再生計画の履行
  
 上記のとおり、民事再生手続は、申立から再生計画認可決定までがわずか6ヶ月間で処理されているのであり、会社更生手続と比較すると、極めてスピーディーな手続であるということができる。
 東京地裁破産再生部では、「事前連絡」の方法を採用し、再生手続申立の際には、合議係備え付けのメモの様式に必要事項を記載して前日にファクシミリにより、送信する扱いを取っている。
 事前連絡を実施しておけば、保全処分は申立ての当日に発令されている。
 また、監督委員については、全件、選任されているようである。

 

手続選択上の留意点・リスク
1.民事再生手続は、債務者企業の経営陣が引き続き経営権を保有できることから、企業経営者の駆け込み寺と捉えられる傾向もありますが、このような見方は正しくありません。
 事業の再生に有用であれば、経営者は、限定された職務権限の中で、その地位を維持するが可能ですが、当然、過去の経営責任については、監督委員や再生債権者から、損害賠償査定の申立(民事再生法143条)が提起されることになります。中小企業では、取締役会議事録や経営判断の基礎となる専門家の意見書等がない場合も多く、査定の申立がなされた場合の、防御は、一苦労です。
 また、営業譲渡があれば、その営業についての経営権を失いますし、監督委員の業務執行の監督・調査の強化、管財人の選任による更迭もありえます。

2.また、再生手続の進行に当たって債権者側の同意が得られない場合は、スピーディーな再生計画の立案が不可能になり、結果的に手続が廃止されて、職権による債務者の破産手続に進むことになる。

 上記の点は、再生手続選択上のリスクであるといえ、手続選択上、十分、留意する必要がある。
運用面での利点
 法的倒産手続の場合、法の規定の他に、裁判所における実際の運用を知ることが極めて有用である。
 私のホームグランドは、東京地方裁判所であるため、このページを通じて提供し得る知識は、東京地方裁判所における実務運用が中心とならざるをえないが、民事再生手続の運用は、今のところ、全国的に統一されているようである。
 民事再生手続を裁判所の運用面での利点という視点から捉えた場合、以下の2点が利点としてあげられる。

 1 窓口規制の撤廃
 再生手続においては、裁判所は申立前に通常事前相談という形で関与するが、申立段階で細かくチェックすることなく、特に著しい問題がない限り、原則として全件申立てを受理した後、直ちに弁済禁止等の保全処分を発令し、手続を前に進めることとしている。

 2 手続の迅速化
 裁判所は、手続開始までの期間、再生計画案の提出時期、債権者集会の開催時期の標準期間を設定し、公表している。これによれば、再生手続の処理の速度は非常に迅速であり、申立から半年程度で再生計画の認可(事実上の再生手続の終了)までたどり着くことができる。しかも、裁判所は特に問題がない限り、開始決定、債権者集会の開催と手続きを進めていく。最終的に債権者集会における債権者の意向を尊重して、債権を認めるかどうかの判断をする方針としている。
 このように、再生手続は運用面の利点もあり、財務内容の改善のための法的手段として、非常に有益な手段といえる。

     
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