申請書の構成
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助成金によって応募要領はそれぞれ異なりますが、一般的に申請書は以下のような項目で構成されています。 |
申請者の概要 |
申請者名(企業名、役職名)、資本金、従業員数、創業・設立日、申請担当者名、業種、代表者履歴、研究者履歴、本店登記住所、開発先の住所、電話・FAX番号、企業の沿革事業内容、株主構成、関係会社、提携先、主要取引先、所有特許、競合他社など。 |
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取引金融機関 |
金融機関・支店名、預金残高、借入金残高など。 |
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財務内容及び損益の推移 |
過去3期分の決算結果と今後3期分(中期)の収支計画など。 |
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申請プロジェクトの詳細 |
申請プロジェクトの概要(目的、対象市場、効果、スケジュール等)、プロジェクト組織の概要、プロジェクト対象費用、資金調達法、助成金申請額、資金調達法、現在の進捗状況など。 |
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その他 |
研究開発計画書や事業計画書、研究開発製品等の図面・写真、特許関連書類等の添付書類や主催者のアンケートなど。 |
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申請の準備
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それでは、研究開発型の助成金を申請する会社にはどのような準備が必要なのでしょうか。助成金によって多少の差異はありますが、一般的には以下のような準備が日頃から行われていると、申請の際大変楽になります。 |
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会社登記関連情報の整備 |
会社の沿革や事業内容について第三者に簡潔にかつ正確に把握してもらうための資料で、以下のような資料となります。 |
・原始定款
・謄本(直近3ヶ月以内のもの。)
・議事録(定款内容に途中で変更があった場合のみ。)
・代表取締役の経歴書
・役員構成表(氏名、住所、連絡先、現在の職業、出資額、会社との関係等、経歴書形式でまとめておきます。)
・事業案内(会社案内)
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決算関連書類(確定申告書類)
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・最近3期分の決算書(損益計算書、貸借対照表、利益処分計算書等の財務諸表は必須。)
・試算表(直近決算から6ヶ月以上経過している場合は必要。)
・納税証明書類(助成金受給のほとんどは地方税、事業税、消費税等の税金の完納が必須条件。)
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取引関連書類の整備 |
・仕入先一覧表(ヒト・モノの仕入先業者とその取引量の一覧。)
・販売先一覧表(製品・サービスの販売先業者とその取引量の一覧。)
・外部協力者一覧表(提携先企業や学校、研究機関、コンサルタントの一覧。)
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研究開発関連書類の整備 |
・研究開発費明細(過去3期分の研究開発に係わる人件費・外注費・部材費の明細。)
・研究開発の概要書(企画書の類。)
・研究開発体制の概要書(研究開発組織図とプロジェクトリーダー及び研究者の研究実績。)
・知的所有権の概要書(所有する特許権・実用新案権・商標権・意匠権関連の書類。)
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事業計画関連書類の整備 |
・中期(3〜5年)の事業計画書(予想の収支計画・資金調達計画・資本政策等を含む。)
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審査のポイント
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助成金の申請書は、一般的に「事業計画書」と呼ばれるものに非常に近く、どんな事業を行うのかについてのコンセプトワークと、見積収支計画、資金調達計画等の財務計画から構成されます。 |
全編を通じて、プロジェクトの1.新規性・創造性、2.他者差別性(競争優位性)、3.市場性(事業性)、4.実現可能性、5.具体性、6.リスク要因などについて保障する必要があり、何よりもそれらに7.一貫性(トータルバランス)があるかどうかが重要となります。 |
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新規性・創造性
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プロジェクトの結果生み出される技術や商品・サービスが今現在、業界内、異業種にも存在しないものであることを、業界紙や研究論文などの業界データ等で証明します。 |
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他者差別性(競争優位性) |
プロジェクトの結果生み出される技術や商品・サービスが先行者や類似のモノと比較してどう優れているのか、研究数値や価格など具体的数値を用いて証明します。 |
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市場性(事業性) |
プロジェクトの結果生み出される技術や商品・サービスが対象市場(顧客ターゲット)にどのようなインパクトを与えるか、また、どのような新市場を創り出すか、統計資料等を利用した市場分析により予測します。 |
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実現可能性 |
プロジェクトの単独実施能力や管理能力について、過去の決算結果や研究開発実績、組織の整備状況などから証明します。共同申請の場合は共同申請者の能力について客観的に証明します。 |
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具体性 |
プロジェクトの進行について、細かなステップごとに計画し、資金調達計画を連動させてプロジェクト管理能力の高さを証明します。 |
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リスク要因 |
市場、組織、資金などプロジェクト推進上の様々なリスクを事前に予測し、リスク回避対策を提案することで、危機管理能力の高さを証明します。 |
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一貫性 |
上記1〜5にしっかりとした関連性を保障することにより、プロジェクト推進者としての総合力の高さを証明します。 |
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助成金の構造
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助成金の種類 |
一言で助成金と言っても、国や都道府県が与える返済不要の事業資金には、補助金や奨励金、給付金そして狭義の助成金など様々なものが存在します。一般的に、補助金とは経済産業省系のものを言い、中小企業創造活動促進法や中小企業経営革新支援法等の国の法認定制度に基づく資金が代表的です。また、奨励金や給付金は対象となる計画に対して1度だけでるもので一時金のようなものがほとんどです。狭義の助成金とは、経済産業省以外の省庁や民間の支援団体などが出すものを言います。 |
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助成金額 |
助成金の募集要領などを見ていると、「対象経費」と「助成率」という言葉が必ずといっていいほど出てきます。「対象経費」とは、研究開発計画の実施に必要な経費のうち、実際に助成の対象として認められる経費のことです。研究開発にあたる技術者・研究者の直接人件費や部材購入費用、テスト費用や市場調査のための外部調査機関への委託費用などが対象になることが多いようです。「助成率」とは、この「対象経費」のうちどれだけの割合が助成金として申請できるか、その割合のことです。例えば、総研究開発費,2,400万円の事業について、東京都の中小企業創造活動促進法の認定事業者が創造技術研究開発費補助金を受給する場合、助成率は2/3、受給できる助成金の上限は3,000万円であるため、この会社の申請できる助成金額は、2,400×2/3=1,600万円となります。対象となる研究開発費が億を超える高額になっても、受給上限以上には助成金はもらえませんので注意が必要です。 |
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受給時期 |
誤解が多いところですが、一般的に助成金の受給は研究開発活動が終了した後になります。つまり、“後払い”となるわけです。したがって、差し迫った短期の資金繰り対策としてはあまり効果はありません。しかし、助成企業に採択された場合、取引銀行などの態度も多少変わってくるケースがあります。助成金の受給資格を担保にとってくれるとまでは言いませんが、確実に支払われる助成金をあてにしての短期間融資も実際に行われています。 |
もちろん例外もあって、中小企業総合事業団が毎年不定期に募集する「新事業開拓助成金」などは、助成金の1/2は開発を行う前、つまり事前に受給できます。 |
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助成金の会計処理 |
助成金を受給した場合、その後の一定期間は適切な会計処理を行う必要があります。助成金によっては受給後数年間、決算の度に規定のフォームを使って報告する義務のあるものもあります。助成金がもし使い切れずに余ってしまった場合(あまり考えられませんが)は、返還義務が生じます。また、助成金は通常、“雑収入”という勘定科目で処理を行うため、そのまま利益を出してしまうと当然のことながら課税の対象となります。せっかく助成金を獲得しても、研究開発という本来の目的に使うのではなく、税金として支払ってしまうのはあまりにももったいない話ですね。 |
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申請方法
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助成金の申請方法は大きく単独申請、共同申請、産学連携による申請の3つに分類されます。 |
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単独申請 |
最もポピュラーな形で、1つの企業や個人事業主が単独で申請する方法です。申請者自体に相当の資金的・人的体力が要求されるとともに、研究開発の実績やその分野の専門知識、販路開拓ノウハウも豊富である必要があります。 |
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共同申請 |
企業や個人事業主が1つの研究開発テーマについて複数で申請する方法です。単独申請に比べ採択率はぐっとアップするといった効果が期待できます。これは、助成金を出す側が、単独の申請者よりも複数で共同申請する者の方が、他者のチェックの目が入る分だけ適切な使い方をしてくれるのではと思っているからでしょう。また、研究開発に必要なノウハウや経験、経営資源が不足している場合でも、申請者が複数であれば、申請者同士が互いに補完または助け合って進められるからでもあるでしょう。
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産学連携による申請 |
文字通り民間企業や個人事業主と大学や専門学校等の学術・教育機関が共同して申請する方法です。採択の可能性は3つの申請方法の中で最も高くなります。技術の新規性の証明などは大学の研究者が、製品化や販路開拓は民間企業が行うなど、分業関係が明確になることにより研究開発が本当に単なる研究で終わってしまう可能性も極小化するからでしょう
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