株式公開準備体制の整備 |
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株式公開準備体制の整備 |
公開準備の過程では、申請書類の作成、主幹事証券会社・監査法人等の外部機関との交渉が必要になる。公開準備を適切かつ効率的に行なっていくためには、各部署の協力、部署間の意見調整等が必要であり、これらの業務を一括して行うセクション(公開準備室)を設置することが、一般的である。
公開準備室の主な役割は、公開準備計画の立案、社内関係部署への指示、公開準備作業の進捗状況の管理、公開申請書類の作成、主幹事証券会社・監査法人等の外部機関との交渉があげられる。これらの公開準備作業は、全社的に推進する必要があり、公開準備室の統括責任者には、全社的に指示を出せる人員を置くことが望ましい。また、公開準備室の実務責任者には、社内全体の業務について精通した、実行力のある人を採用することが望ましい。
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組織体制の確立と運営 |
公開会社には、組織的経営が強く求められ、特に職務権限及び職務分掌のルールに従った適切な運営が要請される。公開会社としての職務分掌及び職務権限の規程を整備するとともに、適切な運用が行われるよう組織体制の確立・運営をはかる必要がある。
組織体制整備にあたっての一般的な留意事項は以下の通りである。
@ 内部牽制機能が有効に働くように職務分掌がなされていること。
A 職務分掌と職務権限は、規程によって明確にされると共に、実際に適切に運用されること。
B 職務権限をコントロールする運営上の手段である稟議決裁制度は、組織的な業務運営を効率的に
行うために、稟議規程に運営ルール及び権限と責任を明確に規程化した上で運営されていること。
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資本政策の立案と実行 |
資本政策とは株式公開を目指す中で公開時においてどのような株主構成が望ましいのか、また、それまでの資金調達をどのように行っていくのかといった課題を、株式移動や第三者割当増資等の方法を用いて解決していくことをいう。
資本政策の立案は、経営権と資金調達という企業経営の根幹に関わるものであるので、公開準備作業における最重要事項の一つである。しかし、資本政策を立案するには、証券取引法、商法、税法(法人税法・所得税法・相続税法)、独占禁止法、公開審査基準などの様々な規制を理解する必要があります。
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<資本政策の考え方>
1.公開を行うに際して実現すべき目標としては、資金調達、事業承継対策、創業者利潤の獲得等が
考えられるが、このうちどの項目の実現にどれだけ重点を置くかが公開戦略ともいえる。
2.資本政策を行うための方法は株式移動、増資等があるが、そのための手法には贈与、譲渡、第三者
割当・株主割当による新株発行、新株引受権付社債の発行、ストックオプションの付与等がある。
3.公開上の制約には、形式基準、第三者割当増資等に対する規制、株式移動に対する規制、合併・
営業譲渡または譲受に関する規則等、様々な公開ルールがある。
以下では、一般的な資本政策の立案手順について説明を行う。
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<資本政策立案の一般的手順>
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4.関係会社の整備 |
株式公開審査上、関係会社についての存在意義が問われる。これは、株式公開後の一般投資家保護という観点から、関係会社を利用した決算操作や、大株主・役員等によって利益行為が行われていないことが新規公開会社に要請されるためである。
<関係会社整備についての考え方>
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計画的経営の要請 |
1.経営計画の策定
@経営計画は本当に必要か
ビジョンのない企業及びビジョンはあってもしっかりした中期経営計画がない企業は、一般的には成功する
場合があっても方向が定まらず長期的には成功する可能性は低いと考えられる。
↓
中期経営計画の策定は、企業が継続的に繁栄するためには、本来必要であろう。
↓
公開準備企業にあたっては、特に公開申請書類の一部として利益計画の提出が要求されているため、
必ず経営計画の策定を行う必要がある。
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1.公開審査上で経営計画はどこまで必要か |
「上場(登録)申請のための有価証券報告書(TTの部)」で、今後2年間の利益計画(損益計算書の各項目)が求められている。
売上高については、部門別、製品別、得意先別に、最近数年の実績をもとに精度の高い具体的根拠数値を積上げており、証券市場から資金調達を行うに足る利益見通し金額であり、株式公開企業として公表に足りうる精度であることが求められる。
経費も、例えば、出店計画があればそのための減価償却費の増加、人件費の増加等をできる限り実体に即した形で取り入れて利益計画を計算することが求められる。
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2.経営計画策定のポイント |
@経営理念の明確化
A事業ドメインの決定を慎重に行う
B外部環境分析を適切に行う
C自社能力分析を徹底して行う
D事業戦略の構築(営業戦略、人事戦略、財務戦略、研究開発投資戦略等)
E中期経営計画の具体的立案
F創造性と革新性
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予算管理体制の整備 |
1. 公開審査と予算統制制度
株式公開企業はその審査段階では予算管理制度の予測数値と管理制度を問われるが、株式公開後は計画数値はより重要なものとなる。
公開企業は決算短信により、業績予測(売上高、経常利益、当期利益等)を発表する。この業績予測に変動が生じた場合、修正を公開しなければならない
業績予想の変動が外部環境によるもので予測し得なかったものならまだしも、予測管理体制の不備によるものなら投資家の信頼を失うことになる。
2.予算編成上の留意事項
@売上高予算で達成不可能な努力目標を掲げない。
A損益予算、投資予算、資金予算等の全ての予算が設定され、整合された総合的な予算が編成され
なければならない。
B各部門の責任において具体的予算を立案・編成しなければならない。
3.月次決算と予算管理制度
月次に予算・実績の差異分析を実施し、必要に応じて適時、的確に対策を講じることにより予算統制を行うことが重要である。
実績の迅速な把握のために、月次決算を迅速かつ的確に行う必要がある。
そのためには、月次決算事務をルール化、マニュアル化し、迅速にデータを提供しうる体制を構築する必要がある。
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組織的経営の要請 |
1. 組織的経営の概要
永続性のある会社運営をなすには、「組織的経営」が必要とされる。特定の人に頼った経営は、永続的な経営という観点からは不安定である。経営者が変わっても永続的に会社運営がなされるような体制が必要である。
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各種経営管理体制の整備のポイント |
以下では経営管理の中でも特に販売管理・購買管理・資金管理について、公開審査の観点からそのポイントを列挙します。
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1)販売管理のポイント
<一般的事項>
@ 売上予算の設定とその調整が行われているか。
A 販売効率の検討が行われているか。
B 販売手続に関する諸規程及びマニュアルが作成されているか。
C 販売に関する各部署の権限と責任が定められているか。
<受注業務>
@ 与信管理を行っているか。
A 受注内容を文書化しているか。
B 受注内容の事前承認を得ているか。
C 納期管理及び受注残高の管理は適切か。
<出荷業務・売上計上>
@ 注文内容に応じた商品等の納入・出荷・在庫管理は適切か。
A 適切な売上計上処理がなされているか。
<請求・回収業務>
@ 請求の網羅性のチェックは行われているか。
A 請求書発行部署は販売部署から独立しているか。
B 請求書の管理は適切か。
C 入金内容の確実な捕捉が行われているか。再請求を行なう場合の手続は適切か。
<債権管理業務>
@ 総勘定元帳と売掛金台帳との定期的な照合が行なわれているか。
A 債権残高の年齢調べは適切に行なわれているか。
B 値引・返品・リベート等の売掛金の消去処理は所定の責任者による承認に基づいて適切に行なわれ
ているか。
C 貸倒償却処理は所定の責任者の承認に基づいて適切に行なわれているか。
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2)購買管理ポイント
<一般的事項>
@ 購買予算の設定とその統制が行われているか。
A 納期・購入価格・品質等の管理が効果的に行なわれているか。
B 購買手続に関する各部署の権限と責任が定められているか。
<発注業務>
@ 発注システムの確立及び承認手続が導守されているか。
A 発注に関する記録及び書類が整備されているか。
<受入・検収業務>
@ 検収時に必要な商号を行なっているか。
A 発注外品、不良品については返品処理が適切に行なわれるシステムとなっているか。
<仕入計上手続>
@ 仕入計上基準を導守し適切に仕入計上を行っているか。
A 仕入伝票を適切に起票しているか。
<仕入業務・仕入債務管理>
@ 仕入時に必要な照合を行なっているか。
A 支払条件と異なる支払を行なう場合は責任者の承認を得ているか。
B 総勘定元帳と仕入先元帳との定期的な照合を行なっているか。
C 長期滞留している買掛口座・赤銭口座は、その原因及び内容を調査しているか。
<外注管理業務>
@ 外注先の選定・変更等につき基準及び権限が明確になっているか。
A 適切に契約を交わしているか。
B 材料の有償支給・無償支給は明確になっているか。
C 外注先の品質管理・歩留率の管理・納期間を適切に実施しているか。
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3)資金管理のポイント
<資金繰管理>
@ 多額な資金調達については取締役会において決定されているか。
A 資金繰計画は月次で作成されているか。
B 資金残高の管理は適切に行なわれているか。
C 資金繰計画と実績の差異分析は適切に行なわれているか。
<現金・預金管理>
@ 請求書の発行・取扱は適切に行なわれているか。
A 支払にかかる請求書のチェック・二重支払防止のためのチェックがなされているか。
B 現金残高は必要最低限になっているか。
C 現金保管担当者は適切に現金実査し、その報告・承認手続がとられているか。
D 預金通帳・預金証書・小切手・手形の保管は適切に行なわれているか。
E 銀行振込依頼書は適切に承認された上で振込手続を行なっているか。
F 銀行勘定調査表を毎月作成し、その報告・承認手続が適切に行なわれているか。
G 銀行預金残高については少なくとも年に1回は銀行から残高証明書を入手し、期末残高の確認を
行なっているか。
H 小切手・手形の発行及び書き損じの処理は適切になされているか。
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4) 月次決算体制
@ 月次決算はタイムリーに行なわれているか。
A 月次決算のルール化はなされているか。
B 月次で勘定残高が適切に管理されているか。
C 予算・実績差異分析及びその報告、承認が適切に行なわれているか。
D 長期滞留債権の有無等の経営情報も適切に報告される体制になっているか。
E 関係会社の月次報告も適切になされているか。
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規程の整備 |
会社公開としてふさわしい経営管理体制を整備し組織的経営を行うため、会社の各業務の運営上一定のルールを設ける必要があります。そのため株式公開準備過程で以下のような諸規程を整備し運用することが求められます。
【主な諸規程】
基本規程・・・定款、取締役会規程、監査役会規程、株式事務取扱規程
組織規定・・・組織規程、業務分掌規定、職務権限規程、稟議規程、内部監査規程
経理規程・・・経理規程、原価計算規程、月次決算実施要領、棚卸実施要領
総務関連規程・・・文書取扱規程、印章管理規程、固定資産管理規程
人事・労務規程・・・就業規則、給与規程、貸付金規程、慶弔見舞金規程、旅費規程、退職金規程
業務関連規程・・・生産管理規程、販売管理規程、購買管理規程
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