バランスシートにはどんな項目があるのか?
|
バランスシートは、資金の運用回収状況を示す資産と、資金の調達源泉を示す負債・資本から成ります。
バランスシートは、大きく分けて@資産、A負債、B資本の3つの区分から成ります。更にそれぞれの区分はいくつかの項目から構成されています。
具体的な3つの区分を見る前に、「資金の調達と運用」について確認しておきましょう。
|
資金の調達先 |
前の項でも見たとおり、会社の活動は資金を調達するところから始まります。ここで資金の調達先としては、大きく2つあります。株主とそれ以外です。株主から調達したものは「資本」、それ以外から調達したものは「負債」と呼ばれます。
両者の違いは、負債はいずれ必ず返済しなければならないに対し、資本には返済義務はない点です。その代わり、利益が出た場合には、配当などで株主に還元することになります。
「負債」や「資本」には別の言い方もあります。「他人資本」と「自己資本」です。資金調達という結果だけを考えれば、「負債」や「資本」も同じく「資本」です(お金に色がついているわけではないので)。
そこで、会社の立場から見て、身内(株主)からの調達を自己資本、株主以外(他人)からの調達を他人資本というのです。
なお、「自己資本」という表現は、会社や経営者の立場から見た表現であり、「経営者が自由に使っていい」と勘違いさせかねません。実際、オーナー経営者でもないのに、「会社や会社財産は自分のもの」と考えている経営者も多くいます。
そこで、「会社はあくまで株主のもの」という認識をはっきりさせるべく、近年、「自己資本」の代わりに「株主資本」という表現が用いられることも多くなりました。
|
資金の還流状況 |
さて、これも確認ですが、調達した資金は製造活動などに投資され、その後、売上代金回収というかたちで還流するしくみになっていました。
バランスシートの資産の部は、ある時点での、この投資から回収への還流状況を示すものであり、実際、項目の並びは下から上に還流プロセスの順番で並んでいます。
製造業を例にとってみると、以下のようなパターンになります。
ゴール
:現金預金
↑ ←・・・売上代金が回収できないリスク
第4コーナー:売上債権(売上代金の未収分)
↑ ←・・・製品が売れ残るリスク
(第3コーナー:販売活動)
↑
第2コーナー:棚卸資産(製品)
↑ ←・・・不良品が発生するリスク
(第1コーナー:製造活動)
↑
スタート :機械設備
はじめに、資金が機械に投資され、還流プロセスがスタートします。その後、製造活動が行われ、投下資金は製品にかたちを変えます。次に販売活動が行われ、首尾よく販売されると製品は顧客に対する売上債権へと変わり、現金まであと一歩と近づきます。最後に、顧客から代金が振り込まれると、投下資金がキャッシュに戻り、ゴールとなります。
(回収された資金は、機械などへ再投資され、還流プロセスが再スタートします。)
上図のように、バランスシートの資産の部は現金から始まって、現金に近い順に上から下へ並んでいます。ここで注意すべきは、下にある資産ほど現金に戻らないリスクが高いということです。
まず、機械を購入しても不良品を製造するリスクがあります。次に、良品を製造しても顧客に買ってもらえず、不良在庫になる恐れがあります。最後に、販売できたとしても売上代金が貸倒れてしまう危険が残っています。
下にある資産ほど、待ち受けているハードルが多く、現金にたどりつく確率は低いのです。
|
@資産の部 |
前述したように、資産の部は「現金への距離」に応じて、以下のように構成されています。
┏流動資産・・・・・・・・・・・・現金、預金、受取手形、売掛金、棚卸資産etc
┃ ┏━有形固定資産・・・機械装置、工具器具備品、車両運搬具、土地etc
┣固定資産━╋━無形固定資産・・・電話加入権、借地権etc
┃ ┗━投資その他・・・・敷金保証金、子会社株式etc
┗繰延資産・・・・・・・・・・・・開業費、創立費etc
まず、資産は流動資産、固定資産、繰延資産の3つに大別できます。流動資産は、近い将来(1年以内)に現金化される資産をいい、現預金のほか、売掛金や棚卸資産(製品・商品など)などが該当します。
固定資産は、長期にわたって利用もしくは所有される資産をいい、これは更に有形固定資産、無形固定資産、投資その他に分類されます。
有形固定資産は「形の有る」資産で、建物、機械装置、工具器具備品などが該当します。無形固定資産はいわば長期の権利で、電話加入権、借地権などがその例です。投資その他は長期の投融資で、保証金や子会社の株式などが該当します。
繰延資産は、本来的には費用ですが、その効果が将来にまで期待されるので、分割で費用処理するために資産として計上したものです。いわば費用の先送りであり、経営的には望ましくありません。現金に変わり得ないので、一番下に置かれるのです。
|
<資産の主な勘定科目> |
資産の主な勘定科目とその内容は次のとおりです。
<項目/勘定科目> ・・・・< 説 明 >
▼流動資産
○現金 ・・・・現金や、受取小切手など即時換金できる証券
○当座預金 ・・小切手・手形を振り出すことができる、決済用の預金。利息がつかない
○普通預金 ・・要求に応じ、即時払い出しが可能な預金。個人で使っている口座と同じ
○受取手形 ・・売上代金の回収として受け取った、他人振り出しの約束手形・為替手形
○売掛金 ・・・代金後払いで販売した売上代金の未回収分
○有価証券 ・・短期所有(売買目的)の有価証券
○商品 ・・・・販売目的で仕入れた物品
○製品 ・・・・販売目的で製造した物品
○原材料 ・・・製品製造のための材料
○短期貸付金 ・役員・社員・取引先などに短期で貸した金銭
○未収入金 ・・商品・製品以外のもの(工場用地など)を売った際の販売代金
○仮払金 ・・・出張旅費などの未精算金
○前払金 ・・・仕入の際に前払いした金銭
○立替金 ・・・社員や取引先などが支払うべきものを一時的に立て替えた金銭
○前払費用 ・・ 支払済みだが、次期以降の費用とされるべき費用(前払利息など)
▼固定資産
▽有形固定資産
○建物 ・・・・工場、事務所、店舗などの建物
○構築物 ・・・広告塔、舗装路などの工作物
○機械装置 ・・製品製造用の機械や装置
○工具器具備品・事務機器、測定機器、家具、工具など
○車両運搬具 ・自動車、フォークリフト、クレーンなど
○土地 ・・・・工場、事務所、店舗などの敷地
▽無形固定資産
○電話加入権 ・電話利用の際の権利金
○特許権 ・・・特許取得に要した研究費、手続き費用
○借地権 ・・・土地を借りる際の権利金
▽投資その他
○敷金保証金 ・建物を借りる際の権利金・預託金
○投資有価証券・取引先の株式など、長期保有目的で所有する有価証券
▼繰延資産
○創立費 ・・・会社の設立にかかった費用で、費用処理されていない金額
○開業費 ・・・会社設立後、営業開始までにかかった費用で、費用処理されていない金額
|
A負債の部 |
バランスシートの負債の部の構成は、次のようになっています。
┏流動負債・・・・・・・支払手形、買掛金、未払金、短期借入金、賞与引当金etc
┃
┗固定負債・・・・・・・長期借入金、社債、預かり保証金、退職給与保証金etc
流動負債は、近い将来(1年以内)に支払もしくは返済をしなければならない負債をいいます。一方、固定負債は、支払期限・返済期限が1年を超える負債をいいます。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて、負債にはもうひとつ大きな分類があります。債務と引当金です。
┏債務・・・・・・・・・支払手形、買掛金、未払金、借入金、社債etc
┃
┗引当金・・・・・・・・賞与引当金、退職給与保証金、返品調整引当金etc
債務とは、会社の支払・返済義務が具体的に(法律的・金額的に)確定しているものをいいます。
一方、引当金とは、特定の費用や損失が確実に見込まれる場合、その確定を待たずに金額を見積もって、支払に備えるものをいいます。例としては、賞与や退職金の支払に備えるための賞与引当金・退職給与引当金、返品が生じた際の損失に備えるための返品調整引当金などがあります。
|
<負債の主な勘定科目> |
<項目/勘定科目>・・・< 説 明 >
▼流動負債
○支払手形 ・・支払のために自社で振り出した手形
○買掛金 ・・・代金後払いで購入した仕入代金の未払い分
○短期借入金 ・返済期限が1年以内の借入金
○未払金 ・・・代金後払いで取引した経費や設備代金の未払い分
○預かり金 ・・源泉徴収した税金など、一時的に預かった金銭
○前受金 ・・・売上代金の前受け分
○仮受金 ・・・受け取った金銭のうち、その内容や金額が未確定なもの
○未払費用 ・・未払家賃など、当期の費用だが請求前の費用
○賞与引当金 ・ 従業員賞与の支払に備えた引当金
▼固定資産
○長期借入金 返済期限が1年を超える借入金
○退職給与引当金・従業員の退職金支払に備えた引当金
|
B資本の部 |
資本は、会社財産のうち株主に帰属する金額を示すものです。それは、株主がもともと出資した金額と事業活動の結果得られた利益とで構成されます。
但し、会計上は商法上の規制もあり、資本の部は以下のような3部構成になっています。
┏資本金・・・・・・・資本金 ――――────┬─配当不可
┣法定準備金・・・・・資本準備金、利益準備金 ────┘
┗剰余金・・・・・・・任意積立金、当期未処分利益etc
―───配当可能
株式会社では、倒産しても株主は出資金額以上に責任を負わないのが原則です。負債金額が会社財産を上回って債権者が債権を全額回収できない場合でも、株主はその不足分を補填する必要はありません。
このままでは、債権者は一方的に不利な立場に置かれます。そこで株式会社では、債権者を保護するため、会社財産を株主に還元(配当)することに一定の制限を加えています。資本の分類は、この規制に関連したものです。
●資本金
資本金は、株主からの出資金です。これを株主に配当することは許されません。
●法定準備金
次の法定準備金は、資本金のほかに商法で債権者用の財源として積み立てが求められている金額です。その1つ、資本準備金は、株主からの出資金のうち資本金とされなかった部分をいいます。
会社は資本金が大きくなると、法律などにより運営方法が煩雑になり、税金などのコストも高くなります。そこで、一般には資本金を小さくすべく、出資金のうち商法上資本金としなければならない金額以外は資本準備金として処理します。
但し、配当の財源になるわけではないので、単に会計処理上の問題に過ぎません。
法定準備金のもうひとつ、利益準備金は、その名のとおり利益のうち債権者用の財源として積み立てが強制されるものをいいます。
しくみはこうです。会社は利益が出た場合、株主総会の決議に基づいて株主への配当や役員へのボーナス(役員賞与)を支払います(これらを社外流出といいます)。いくら利益とはいえ、社外流出を無制限に認めると、債権者用の財源はいつまでたっても充実しません。そこで、社外流出を行なう際には、その10分の1を債権者用の財源として積み立てるのです。
●剰余金
3つ目の剰余金は、利益の蓄積のうち配当に回せる部分です。このうち、未処分利益とは、利益の処分方法が株主総会で決められていない金額を指します。なお、利益のうち配当や賞与の支払に回されなかった部分を内部留保といいます。
資本の部で大切なのは、この内部留保です。内部留保が厚いということは、その会社は利益体質だということであり、また利益の多くが社外流出することなく、再投資に回されて事業活動が積極的に行なわれているという証拠でもあるからです。
逆に赤字の会社では、資本を食いつぶしながら生きていることになります。この場合には、あと何年もつか、砂時計を横目に経営しなければならなくなります。
|
|
|
|