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税務調査の心構え
 
調査の概要と事前に行っておくべき社内総点検

1.調査の概要

(1)調査はいつ行われるか

調査対象企業の選定は、業種、規模、業績、過去の調査実績など、いろいろな要素に基づいて行われます。したがって、いつごろ調査されるか予測は立て難いものです。
しかし、現在の調査対象選定のやり方から憶測して、次のような場合には調査されるものと考えた方が良いでしょう。

前回の調査から3年以上たっている
企業の業績に著しい変化が生じた。(業績好転の場合の外、特に売上げの伸びに比し、利益率が伴っていない場合)
大きな設備投資をした。(土地の取得が多額の場合等)
個人借入金が増大したり大幅に変動した



(2)調査にはどんなやり方があるか

調査は次のように区分して行われていると考えられます。

<強制調査>
悪質脱税容疑者に対し、裁判所が発行した捜査令状をもとに、国税局査察部の国税査察官による有無をいわさず強制的に証拠物件や書類を押収して行われる調査です。これは相当多額で悪質な脱税が探知された場合に行われ、俗に「マルサのガサ入れ」といわれています。

<任意調査>
任意調査というのは、申告の内容について確認をする意味で調査するものです。とくに、あらかじめ脱税または不正の事実をつかんだということで行われるものではありません。したがって、事前に調査の予定日を連絡してくるなど、企業の側からいえば都合の良い調査といえます。
しかし、任意とはいっても、税法上の質問検査権をもって調査にあたるわけですから、正当な理由なしにその行使を断った場合には、所定の罰則が科せられます。
通常、調査という場合はこの任意調査のことであり、一般に数多く経験する調査です。これから説明するのも、主としてこの調査についてです。

<特別調査>
これは、前述の強制調査と任意調査の中間的な性格の調査といえましょう。広義には任意調査の分類に入りますが、申告内容に特に疑問が持たれ、その規模も割合大きいものがこの対象とされるようです。この調査は前述の任意調査とは違って、事前の連絡なしに来ることになっています。
特別調査には、国税局の課税部資料調査官により行われるものと、税務署の特別調査部門の国税調査官により行われるもの及びこれらの合同より行われるものとがあります。国税局の資料調査課は各種の資料源を開発したり、各税務署からの上申等により調査の難易度が高いもの、例えば事業所が何ヶ所もあったり、取引銀行があちこちにあるなど広域調査を必要とするもの、事案の内容が複雑で多くの事務量を必要とするもの、外に税務署の若手職員の調査技術指導などを分担しています。



2.調査に対する心得と準備

調査にくる時、調査日の通知なしで突然来る場合と、あらかじめ知らされる場合の二つがあります。この問題は、税務調査を行うなあたっては、原則として、事前通知することとされていますが、これは、事前に調査日時を連絡しても税務調査の実施上に支障がないと認められる場合、あるいはかえって、その方が調査が効率的に行えると認められるような場合にされるのであって、事前通知が、税務調査を行ううえにおいて法律上の要件とされているものではありませんから、よくご理解いただきたいと思います。そうした場合の心得や準備はどうすればよいか、それぞれの場合に分けて考えてみましょう。


(1)事前の連絡なしにきた時の心得

これは「現況調査」といわれ
・不正の疑義のあるもの
・証拠湮滅の恐れのあるもの
・現金売上げが主体の業種

などについて、その実態と証拠を押さえるために行われています。

この場合は、
・現金の実際在り高と現金出納帳との突き合わせ
・金庫や机の引出の中の書類やメモの調査

は徹底的に行われるものと覚悟しなければなりません。

こうした目的で予告なしできた場合、どう対応すればよいでしょうか。もちろん、正確には強制調査でないかぎり、こちらの業務遂行上重大な支障がある場合は、調査の延期をしてもらうことはできます。しかし、調査の目的が現況の把握である以上、相手が納得できる十分な理由がなければ、まず延期は難しいと考えなければなりません。
したがって、この場合は、調査を受けるという姿勢、態度をまずとるということになります。

先方の要求する調査はに対しては、差し支えないかぎり応じてゆくことです。腹を立てたり、感情的な対立意識を持つことは、結果としてプラスにならないと知るべきです。
ただし、業務に関係のない私物の検査や質問については、その理由を述べて検査を拒否しても差し支えないと思います。
また、疑念を抱かれるような事項が発見されたときは、その疑いを解く説明をしなければなりませんが、相手が不当と思われる見解を持っているときは、その撤回を要求すべきでしょう。しかしその際にも、こちらとしては穏やかで冷静な態度を忘れないようにしなければなりません。

次に代表者や責任者が不在の場合には、その時いる者の中で一番責任を持たされている人が応対し、お引き取り戴く方が一番賢明ですが、わざわざ事前の連絡なしに来ているのですから簡単には引き取ってくれないでしょう。可能な限りの調査を最大限に行うはずです。
この場合、質問検査権は、どの範囲まで及ぶかということになりますが、法人税法の場合には単に「法人に質問」するものと規定されているのみですが、具体的には、代表者のほかその代理人、使用人その他の従業員に対するもの含まれます。また、所得税法の場合も、法人税法の場合と同様ですが、使用人のなかには、家族事業専従者も当然含めての対象になりますから、理解しておいてください。

しかし、税務署員であっても捜査令状なしに強制調査はできないのですから、通常代表者や責任者のいない場合には開けることができない金庫や机の引出等を開けたり、その許しがなければ見ることのできない帳簿書類等を見せたりする必要はありません。自分の守備範囲について質問された場合には明快に答弁しなければなりません。あまり良く判らないことについて想像で答弁したり、できない約束をしたりすることがないよう注意すべきです。


(2)調査日時が知らされているときの心得と準備

任意調査では、このケースが一番多いのですが、税務署から「○月○日に調査に伺いたい」と連絡してきます。これは調査を受ける側の都合を考慮するとともに、準備の時間を与えて、調査をスムーズに実行しようという税務署の合理的な考えから来ていると思います。


<連絡を受けたときの注意>
予定日の都合の検討
連絡を受けた日時、曜日には、できるだけ応じるように努めること。ただし、その日に、すでに以前から約束とている大切な得意先との打合せとか、出張の予定が組まれている場合は、遠慮なくその事情を具体的に説明して調査日を変更してもらうことです。たいていは聞いてもらえると思います。
しかし、たいした理由のない引き延ばしとか、作為的な変更と見られると後日の調査の際によくない先入観を持たれたり、次回からの調査にあたって事前通知がされなくなりますから、安易には変更しないことです。

調査担当官の部署・氏名の確認
担当官の所属部門と氏名をよく聞いておくこと。たとえば、「法人○部門の○○さん」 というように、予定日と同時に、ハッキリと確認し、メモしておいてください。これは、次に述べるように、関与税理士への連絡とか、何かの都合で担当官に連絡の必要ができたときのために備えるためです。

関与税理士への連絡
納税者に事前の連絡をする場合は、関与税理士にもその旨を通知することになっており ますが、税理士には何をさておいてもすぐに連絡をしてください。調査に来る税務署の担当官の氏名、部署、調査日時を知らせて当日、調査の立会いをしてもらえるかどうか都合を訊いておくことです。無理してでも立会ってくれるでしょうが、予定もあることですから、早めに連絡します。
なお、前もって税理士に報告しておきたいこととか問題点があるなら、あらかじめ打合せておくことも必要でしょう。処理の考え方や説明の仕方について指導を受けておくと、調査にあたってマゴつかないですみます。


<調査を受けるにあたっての心得と準備>
経営者との連携
先に述べたように、経営者のなかには、「税務調査」と聞いただけで頭の重くなる人も少なからずいると思います。しかし、具体的な数字や細かい問題点については、経理担当者が受持ち、企業の概況や業績などは経営者に説明してもらうといったチームプレーで対処するようにします。こうすることによって、経営者に税務についての深い認識をもってもらえることになり、相手に好感を与えることにもなります。

金庫や引出し、キャビネットなどの整理・点検
任意調査で来た場合でも、かならず金庫や担当者の引出しまで検査されるものと考えて、整理・点検しておくに越したことはありません。
金庫や引出しの中には、不思議と余計なものや不要なメモ類が入っているものです。メモ書きした数字などはすべて整理しておいてください。何もやましいものではないのに、調査の場で何の数字だと訊かれても、なかなか頭に浮かんでこないものです。古い手帳などにも、質問の材料にされそうなことが書かれていることが多いようです。
つまらぬ疑いや生活内容が察知されるようなものは、この際思い切って整理してしまうほうがよいでしょう。
なお、経営者個人の預金証書や通帳、株券、印鑑、従業員からの預かり預金証書なども整理しておくことです。説明すればわかることでも、会社の業務にかかわりのないことを説明するだけ時間のムダでしょう。

手許現金と出納帳との照会
現金は、常日頃から確実に照合され、合致しているのがふつうです。なかに、この点をあまり気にしないところもあるようですが、調査の時点で食い違いがあれは、当然疑念を持たれ、不利な立場を招くことになります。食い違いについて相当な理由があって納得できる説明ができればよいのですが、平素の管理体勢に問題があるとみられないよう、完全に合致させておきます。

いらざる疑いを招かないために
税務署はね職業上すべてに疑いをもってやってくると考えなければなりません。したがって、何か気を廻されたり、疑いを持たれそうなものは、目のつかないところへ整理しておくに越したことはないでしょう。
たとえば、直接取引している銀行以外のマッチや手帳、カレンダーなどが目にふれれば、内緒の預金があるのではないかと一度は疑ってみたくなるのが常識です。もちろん、最近は銀行や証券会社では新規得意先開拓や宣伝のため、こうしたものを配布していることが多いので、そんなに神経質に考える必要はないかもしれません。しかし、念には念をいれて、一度見廻して見てください。
次に電話番号帳ですが、たとえば表向きの銀行以外の銀行、証券会社、商品取引の会社などの名前が載っているのが目にとまることがあります。これは、マッチや手帳などより深くかんぐられるものです。いまさら消す訳にもいかないでいょうが、この点は十分頭に止めておくことが必要です。

一般従業員への注意
経営者や経理担当者は、それぞれ調査を受ける心構えや準備をしていますので、税務署としては、平素の状況を知るには一般の従業員、ことに現場の従業員から聞くのがよいということになります。
したがって、調査担当官は機械をつくり現場の人に接触し、また、それによって調査のキッカケをつかむこととしています。調査の前には一応従業員にもそのことは話しておいたほうがよいと思います。
しかし、「税務署の人から訊かれても返事をするな」とか「こう答えよ」とかいったことし言うべきではありません。聞かれたことで、わかることは返事してもよいが、わからないことを想像して喋ったり、自分の意見を述べないように、という程度に注意しておくべきでしょう。

経理担当者としての準備
一応、過去3年分の帳簿や伝票、証憑書類はいつでも取り出せるよう準備して下さい。調査は、書類を検査するのに時間の大部分を費やします。
調査担当官が来てから帳簿や伝票をゴソゴソさがして時間を徒に経過させるのは、賢いやり方ではありません。
帳簿や伝票、請求書・領収書、などは所定の場所にファイルして、期別・年月を記入して準備とておきます。こうしておけば、要求された書類はすぐ取り出せますし、テキパキと応答できます。
また、帳簿書類の落書きやチェック印等についても調査の目が向けられます。ちょと書かれた数字やチェックについても充分説明できるようにしておきべきです。
このような準備や態度が、調査担当官の信頼を得ることになり、調査を早くすませることにもなります。

 

揃えておくべき証拠資料と税務調査の具体的事例からその内容の把握
税務調査に対応する方法といっても、その場にのぞんで目新しいテクニックや手段があるわけではありません。平素からの準備や心掛けによって、正しい会計処理がなされていることが前提となります。
しかし、調査は、基本的に"取る側"と"取られる側"といった相反する立場の間で行われていますから、こちらがいくら正しいと思ってやっていても、どうしても意見の食い違いや解釈の相違が生じます。これらのトラブルをできるだけ少なくし、早く調査を済ませるようにするのが、上手な調査の受け方といえます。

1.平素からの準備

税務調査の基本は「証拠書類」の十分な把握を前提とし、その結果として誤りがあれば更正決定をすることになります。
さて、ここで特にご理解をいただきたいのは、実際には「証拠書類」として認められるものであっても、税務上は、「証拠書類」として認められないケースがあります。調査を受ける側の作成あるいは提出するものが正しいがどうかを調査するのが税務調査であります。これが「証拠書類」となるためには、反面調査などにより、相手方との一致をみることによって、初めて真実の「証拠書類」となるわけであります。このことを十分に心得て「証拠書類」の整理・保管をしていく必要があります。
具体的な準備の細目に入る前に、企業として日頃から準備しておきたい基本的な資料について述べておきましょう。

(1) 証拠書類の準備を
実地調査は、企業が申告した課税所得が適正かどうかを確認するものです。原則的には、企業利益の内容の調査ということになります。
したがって、企業としては申告した会計年度の損益の発生経過と理由を明確に把握とておき、実地調査の際に疑義が出れば、具体的な「証拠資料」を示すことによってその疑いを晴らす必要があります。
税務調査では、証拠ということが強調されます。さとえ口頭で説明でき、帳簿に示されていても、目に見える証拠がなくては説得力に欠けます。
そのため、メモ書きや打合わせ資料など、いらざる疑いを招きそうなものは処分しなければならないのは勿論ですが、取引の事実を明確に説明出来る契約書や見積書、領収書などについても、特に平素から几帳面に整理・管理しておく必要があります。

(2) 社内処理規定の作成
できれば、社内処理規程の基準を作っておきます。
たとえば、交際費を支出したり、従業員に金を貸し出したような場合に、その額や金利などについて行き当たりばったりに処理していたのでは、調査を受ける際にその点を突かれても、相手を十分納得させることは出来ません。
また、自社内でのトラブルの原因ともなりかねません。交際費の範囲とその具体的な内容の規程を作っておきます。
これらの規程や基準にしたがつて処理すれば、それが特に不合理なものでないかぎり、企業側に有利に認められると思います。

(3)どんなところに目をつけられるか
一般の企業において、実施調査の際、通常どんなところに目をつけられるか、その項目を大きく分類すると、次のようになります。
@ 経営の概況
A 期末に整理・たな卸する資産・負債項目
B 期間損益決定の各種損益項目
これらの項目のうち、税務署内部での準備調査によって、調査の重点、対象をしぼってやってくると思います。しかし、各項目はそれぞれ相互に関連を持っているので、いずれか一つの項目で不審な個所が発見されれば、かならず他の項目についても調査されるものと覚悟をしておかねばならないでしょう。
それでは、どんなところに、調査重点を置いて来るのか、その一般的なポイントを述べます。これを裏返せば、そのためにはどんな準備が必要かを意味することになります。

 
2.経営概況の調査

申告に際して提出した事業概況説明書の内容が調査のポイントになります。つまり、@販売や仕入れ、外注費の月別金額に異常なものはないか、前期と比較してどうか、A売上総利益率の前期からの推移はどうか、B取扱商品構成比率の変化、C役員や従業員数の変化、などについて現況確認が行われます。
前期と比較して、数値に大きな変化がある場合は、当然その理由や原因を質問・調査されますので、資料を示して計数に基づいた説明をします。
この場合、自社の経営上の原因によるものはもちろん、業界の現況についても触れた幅広い説明をするとよいでしょう。


3.資産と負債項目の調査

資産、負債項目のうち、一般に共通する流動資産について、税務調査の目のつけどころを要約すると、おおむね次のようになります。
@ 現金…残高管理と記帳の調査
A 預貯金…残高確認と小切手類の調査
B 受取手形・支払手形…手形の内容と受取先
(振出人や裏書人)、支払先の確認
C 売掛金・買掛金…得意先、仕入先との残高照合と取引内容の調査
D 貸付金…理由と条件、資金の源泉の調査
E 借入金…理由と条件、資金の使途の調査
F その他の各種資産・負債…費用の繰延べ、収益の見越し処理、前渡金や仮払金の長期滞留、役員との取引に基づく預り金などの調査

(1) 現金の出納管理について
現金は、預金と共に、税務調査のうえで必ずといっていいほど、行われるチェックポイントであります。
これは、現金が「大部分の取引と有機的なつながりをもつ関係上この勘定をチェックすることによって企業の内部牽制組織の信頼のテストと、不整取引の端緒をつかむうえに重要である」ということであります。
@現金出納帳が正しく記帳されているかどうか…手許有り高が正しく管理されるためには、基本となる出納帳が常に記帳されていなければなりません。当然、調査日現在まで記帳されていることが必要です。
A現金の有り高が出納帳残高と常に照合され、一致しているか…これは単に調査対象というより社内管理上当然実施すべきことですが、その方法として、たとえば「現金照合表」を作り毎日書き入れることを勧めます。毎日の手許有り高の金種・小切手枚数などを記入し、帳簿との一致、不一致を確認してゆくわけです。経理担当者の業務の一つとして制度化しておけば万全です。
B帳簿残高が長期に渡って必要以上に多額の数字になっていないか、逆にマイナスとなっていないか…仮払いメモによる出金、役員や特別な個人からの借入金未記入などの疑いを持たれます。
C領収書は正しく受取り、その支払日と領収証発行日は一致しているか…領収証は、現金預金による支払のほか手形による支払などについても受取る大切な証憑書類です。領収証の内容が不明確なものはないか、たとえば、住所の書かれていないもの、市販の用紙を使い社名もアイマイと見られるようなものは、調査の際、目をとめられると思って下さい。
Dその他の注意事項として、役員個人の現金を金庫などに保管しておかないことです。

(2) 預貯金の出納管理について
預金勘定の調査の重要性については、二つのポイントがあります。その一つは、預金勘定そのものから、不正の所在を把握すること、もう一つは、銀行そのものに反面調査を実施することによって、企業の処理の正否をチェックすることにあります。いずれにしても、税務調査において、預金勘定あるいは銀行調査は欠くことのできないものになっているということであります。
@預金残高の照合はされているか…銀行預金については期末に残高証明をとるのがふつうです。
決算の際は、その差異は確実に調べておかなければなりません。なお、普通預金については、利息の記入モレのないように注意して下さい。
A長期にわたって未取付けとなっている小切手、未渡し、の小切手はないか…こんな小切手が発見された場合に、その理由がアイマイ・不明なようでは余計な疑いを招くことになります。
C その他の注意事項として、個人名義の通帳や印鑑等を保管しないことです。特に、退職者の通帳や印鑑の保管には十分に注意して下さい。

(3) 受取手形・支払手形について
営業上の手形と金融上の手形を区分しているかどうか、また受取手形で処理していても、支払手形と対応する融通手形や簿外の預かり手形がないかどうか、などに注目してきます。この調査の目的は、融通先との関係や別途収入の有無、受払いした金利などについて知るためです。

(4) 売掛金・買掛金について
@ 決算期末において、請求締切日から期末までの売上・仕入は正しく記入されているか
A回収した売掛金の中に償却済みのものが入っていないか。また、得意先元帳に売掛金を計上したあと、返品があったにもかかわらず、そのままにしていないか…これらを防ぐには、期末に必ず「残高確認」をすることです。これによって正しい残高の立証や社内チェックもでき、返品や値引きのマイナス要因の整理も行えます。
B買掛金の中に長期未払いのままに滞留しているものはないか…こういったものがあると、仕入先倒産や値引きなどにより、支払う必要がなくなって、雑収入とするべきものではないかと疑いを持たれます。
C架空の仕入先講座や計算ミスはないか。仕入値引、仕入戻し、仕入割戻しの受入れが未処理になっていないか…これらのものがあれば、期末に近い締切り時点の仕入先の請求書を整理・保管し、支払明細のメモなどを元帳末尾に貼付しておきます。

(5) 貸付金について
役員に対する貸付金の理由や立替金、仮払金の内容について、疑いを持たれそうなところはありませんか。たとえば、長期の仮払金があれば、使途不明金や役員賞与となるものがあるのではないかと疑われます。
また、貸付金の利息は適正にとっていますか。利息をとっていても、利息の取極めが適当か、その根拠は何によっているかなどについて、十分回答出来るようにしておきます。そのためにも社内貸付金規程や、外部への貸付の場合の方法や取極めは、よく整備しておくことです。

(6)借入金について
銀行や公的機関からの借入については問題ありませんが、役員とか特定の個人からの借入金については、その使途はもちろん、金額が大きい場合はその資金源泉を突かれることがあります。関連調査ということで、会社と特に関係の深い立場の人にも調査の手が及ぶことも考えておく必要があります。
そのほか、借入金に対する利息の支払はどうか、利率は高くないか、賃借の契約はどんな内容かなどについても、明確な返事ができるよう準備しておきます。

(7)その他の資産・負債について
@期末において「未収入金」の計上がもれていないか…翌期首の入金記録により、取引発生時の計上モレが発見されることがあります。
A支払経費の中に「立替金」がないか
B「仕入割戻し」の未入額は計上されているか。その根拠となる計算書や契約書はあるか
C長期滞留している「前渡金」や「仮払金」はないか
D「前払費用」を計上して費用の繰延べをしていないか
E「仮受金」の中に長期滞留のものはないか。利益に組み入れるべき性質のものはないか
F「預り金」のなかに、利益に振り替えるのが妥当なものはないか…特に役員からの預り金がある場合には、その理由を明らかにしておくことか肝要です。

4.棚卸資産の調査

中小企業では、期末の実施たな卸だけで、帳簿たな卸は行っていないところが多いようです。また、たな卸資産は、複式簿記のダブル・チェックからハミ出した唯一の項目のため、価額の決定などに比較的社内操作のしやすい資産といえます。これらのことから、税務署では、たな卸資産の項目は最も簡単な利益操作の温床とみて、特に厳しく調査します。
たな卸資産の調査は、数量の価額(単価)との二つの面から行われます。

(1) 数量について
数量の実地たな卸は実際に行われたか、また、その原始記録(その時使用した記録・メモ)はあるか、などが調べられます。したがって、清書したたな卸表ばかりでなく、それに至る過程のメモや照合記録は、かならず整理・保管しいおくことです。
以下に、調査の際にチェックされる項目とその対策を簡単に列挙しておきます。
@外注先への預け品等の社外在庫品モレはないか
A得意先への委託販売品や未仕切浮き貸し品なとの計上モレはないか
注:@やAを証明するため、預け品残高確認書や残高証明書、浮き貸し委託品伝票などの保管がひつようです。
B期末直前の仕入商品や材料、翌期初めの売上、出荷などに対応する在庫品が期末たな卸表に存在するかどうか。また、期末直前の売上返品が計上されているかどうか…これらの項目の品目・数量のチェックは、ぜひやっておくことです。
C原材料の使用量が所定の予算表より多くないか。これによる製品原価の水増しがされていないか。また、完成品の一部除外や私用残材料の除外をおこなっていないか
D仕掛品のたな卸は適正に行われているか…仕掛品のなかでも殊に外注先など社外になる仕掛品は、その把握が困難なため、計上ミスがあってもわかりにくく、また利益操作に利用されやすいので、特に注目される項目です。
この調査に対する準備としては、予定原価基準や生産予定表等を整備して、その計上根拠を明らかにしておくことです。翌期初めの製品の完成や売上の数字から簡単に仕掛品除外の有無が発見されることも留意しておいてください。

(2)価額(単価)について
たな卸資産の評価は正当であるかどうかということで、次のような点がチェックされます。
@評価方法はどうか、あらかじめ届け出た方法によっているか、また、原価に算入すべき仕入諸掛りは除外されていないか。
A仕掛品の評価により誤りはないか。どんな基準によっているか。その基準は合理的か。
注:原価計算の方法は、あらかじめ整備しておくことが望ましいといえます。調査への対策としてだけでなく、製造管理上からも必要なことです。
B評価減をした場合、その根拠は何か…評価減はなかなか認めてもらい難いものです。しかし、社外販売の実績とか保有期間などで認められる場合もあります。その商品の過去の動き、売価、調査時期までの動き、処分価額などによって慎重な判定がされますので、軽率に評価減すると否認されます。
なお、以上のほか企業としては、たな卸資産の総額が、過去の実績や標準的な数値と比較して異常になっていないかどうかもチェックしておくべきでしょう。売上げの増減や仕入れ、外注加工などの数字の異動によって、たな卸の数字は大きく影響されますが、それには相関関係が保たれていることが必要です。さらに、売上総利益率からも逆算して在庫の概数の正否が問われることにも留意しておくべきでしょう。

5.固定資産の調査

固定資産には、@有形固定資産、A無形固定資産、B投資等がありますが、このうち、調査の際に一般に問題とされるのは、@の有形固定資産、すなわち、土地、建物、機械設備、車両、器具備品などに関するものです。そこで、これらの調査について簡単に触れておきましょう。元来、固定資産は、毎期大きな変動があるものではないので、ふつうは調査の対象とはならない項目です。しかし、期中に特に大きな設備投資や土地建物等の購入が行われた場合は、その理由をはじめ、購入資金の源泉、さらには全体的に企業利益のバランスなどが調査されます。
細かな点では、それらのために支出した各種費用のうち、取得原価に算入するべきものが正しく処理されているかどうかもチェックされるでしょう。
したがって、明確な説明ができるように、契約書や証憑書類は、物件ごとに整理しておくことが必要です。
以上のほか、従来から所有している他の固定資産についても、多額の修繕費の支出があった場合には、資本的支出(資産の簿価を増額させるもの)と費用としての修繕費の区分が適切に行われているか、また売却、除却、減価償却の内容などについても目をつけてきます。

6.一般管理費及び販売費の調査

(1)役員報酬と賞与・退職金について
中小企業では、役員の報酬と賞与が一般管理費のいちで大きな比重を占めており、また、利益操作に利用されている面も少なくないようです。したがって、役員に関する次の諸点については、平素から処理を間違えないようにしておき、関係資料の整備なども行って、調査官の疑問に即答出来るようにしておかなければなりません。

1)役員報酬について

@役員報酬の金額が過大ではないか…株主総会の議事録によって、その支給額の枠の正当性を示す必要があります。さらに、額の妥当性についても、会社の収益状況から見て適当かどうか、同業他社の従業員の給与と比べてどうか、といったことも検討し資料も揃えておくべきでしょう。
A臨時に支払われたものはないか、また、期の途中で増額したり遡及して報酬の支給を行っていないか…臨時に支払われたものは役員賞与となりますし、期の途中に増減があると、利益操作のための変更と見られますから特に注意が必要です。
B使用人のうちに実質的には役員・使用人兼務役員とみなされる者はいないか…同族関係者の地位や立場について問題があるからです。これは取締役会議事録、株式名簿などが調査対象。
C現物給与とみなされる経済的利益を与えていないか…たとえば、特に低利な金銭の貸付とか低額家賃による社宅賃与などが調査の対象とされます。金銭の賃借契約書、社宅の賃借契約書とか使用規程などによって、報酬とされる経済的利益の有無がチェックされます。
D長期未払いとなっている報酬はないか…これは否認の対象とされますから、理由を明確にしておきます。期末までに支給するにこしたことはありませんが、それが出来ない場合は、所得税を源泉徴収・納付して、借入金または預り金とし、「未払金」の状態は精算しておくべきでしょう。


    2)役員賞与について
次のような点について、調査の目がむけられます。
@役員賞与が損金に算入されていないか。使用人兼務役員の使用人分の賞与計算に誤りはないか…役員の賞与は損金に算入できません。ただし、使用人兼務役員の使用人分の賞与についてだけは損金算入が認められることになっています。したがって、その区分計算は適正か、比較される使用人の金額は適当か、また、支給日(一般社員と同じ日か)などが問題とされます。
A経済的利益で賞与とされるものはないか…交際費や海外渡航費などのうち、経済的利益として役員賞与に該当すべきものはないかどうかについて調べられます。

    3)役員退職金について
役員が退職した場合に支払った退職金については、次の点がチェックされます。
@役員退職金の金額が過大ではないか…役員の退職金については、株主総会か、その委任によって取締役会が決定することになっています。そのため、額の妥当性は、その役員の在職年数、功績、退職の理由、同業同規模他社との比較によって総合的に判定されます。なお、株主総会議事録に正しく記録されているかどうかも調べます。
A損金算入の時期に間違いはないか…役員退職金は、その支給すべき額が具体的に確定した年度の損金として経理しなければなりません。つまり、退職日ではなく株式総会などで具体的に額が決議された年度の損金に算入することになります。



(2)従業員の給料手当など
給料手当などについては次のような点がチェックされます。
@架空の人件費が計上されていないか
A労働者名簿(賃金台帳)は整理されているか
B源泉所得税関係の書類は整備されているか…たとえば、「扶養控除等(異動)申告書」や「所得税源泉徴収簿」など。
C社宅の低額家賃による貸与や金銭の低利貸付などの際の経済的利益の処理は妥当か
Dその他…主婦のパートタイマーや学生アルバイトなど、時間給の管理状況もチェックされます。また、給与規程、出勤簿やタイムカード、時間外勤務の記録、欠勤届等についても調べられますから、整理しておきましょう。

(3)福利厚生費
福利厚生費は、原則として費用として処理できますが、給与(個人課税)になったり、交際費(限度超過分は会社に課税)になったりするものもあり、その点がチェックされるでしょう。特に注意したい点は次のとおりです。
@各種の社会保険料に対する個人と会社負担分の処理に誤りはないか
A現物給与(記念品・食事・商品の値引き販売など)や交際費(宴会費用にど)に一部分でもなるものはないか

(4)広告宣伝費
@前払広告宣伝費が損金処理されていないか…これは、前払費用に計上すべきです。
A看板、ネオンサイン、マネキン人形などの有体物の処理は適正か…取得価額20万円以上のものを購入した場合は、資産に計上して減価償却していかなければなりません。


    売上(売上除外)と仕入の調査のポイント
    売上(売上除外)
    仕  入
    @仕入に見合った売上となっているか
    A期末の売上を翌期に繰り延べていないか
    Bスクラップ売却などの雑売上や自家消費などの売上は計上しているか
    C荷造費や運賃などの経費が売上高と連動しているか
    D売上に見合わないほどの多額のリベートが支払われていないか
    E正常な売上を見本品や試供品として処理していないか
    F掛売上が除外されていないか
    G商品や得意先の一部を計上除外していないか
    H売上代金を仮受けや借入といった名目にしていないか
    I特許料・ノーハウ使用料の支払いが多くなっていないか
    J個人投資や個人名義預金の増え方に異常なものはないか
    Kレジスターが正しく打たれているか
    L建設業などで、追加工事分や値増し分などが隠されていないか
    @納品書、請求書、領収証などが保管・整理されているか
    A上記の伝票や書類に架空のものはないか
    B売上に見合った仕入れとなっているか
    C前期からの繰越しの額は正しいか
    D受取りリベートの計上モレははないか、
    E仕入帳の記載金額、内容は正しいか
    F支払代金の決済に異常なものはないか。支払期間が異常に長くなっていないか
    G実際の支払日と領収証の受領日にズレはないか
    H異常な大口現金仕入や臨時の仕入はないか
    I仕入れた現物と帳簿の数字は一致しているか
    J仕入が異常に増減している月はないか(仕入伝票と請求書や領収証との照合や、その筆
    跡、訂正箇所の追及まで行われる)


(5)交際費
交際費の支出は、一定額を超えると、その超えた分は課税されることになっていますが、特に得意先接待の多いような会社は、これをいろいろ勘定科目に分散して課税を免れようとしているのではないかと、厳しくチェックされます。
@すべてが集計されているか…未払・仮払交際費も、交際費の限度計算にあたっては集計しなければなりません。
A他の費目で処理している費用の中に、交際費となるものが含まれていないか…売上割戻し、広告宣伝費、会議費、旅費交通費、販売促進費、情報提供料等の中に、交際費とすべきものが見つけられることもありますから、区分を明確にしておいて下さい。
B使途不明金や、役員賞与とすべきものはないか…渡切り交際費は必ずチェックされます。「使途不明」に係る税務の取扱いは、その名目がいかなるものであっても、その費用を損金としないと規定していますので注意して下さい。

(6)旅費交通費
旅費交通費については、源泉所得税が課せられないため、この名目で別途給与として支給されるケースもあり、主に架空出張の有無が調査されます。
@出張の事実は明確に立証できるか…旅費清算書や旅館・ホテルなどの領収証の整理はされていますか
A旅費規程はあるか…規定されている日当や宿泊料が過大かどうかなどが調べられます。
B海外出張は本当に業務の関係で行われたか…業務と観光とを併せて行ったときは、その比重の按分計算の適否がチェックされます。渡航の目的、内容、日程等を明らかにするもの、出張日誌やレポート等を用意しておくことがポイントです。

(7)減価償却費・修繕費
@償却方法、耐用年数の適用は適正にされているか…中古資産を購入した場合、その耐用年数は正しく算定していますか。また、固定資産台帳や購入契約書、領収証なども整理しておきます。
A修繕費のうち、資本的支出としなければならないものはないか。この区分は適正か…修繕見積書、請求書(控)などの関係書類も整理しておきます。

(8)その他の費目
@保険料…生命保険料として支払ったもののうち、掛金、積立金として資産に計上すべきものはないか。
A租税公課…法人税、市町村民税、罰料金など損金にならないものと、事業税や固定資産税など損金となるものとの区分処理は正しくなされているか。
B雑費…雑費のうち、金額の大きなものは、できるだけ他の科目に振り替えておくこと。

(9)貸倒償却の調査について
貸倒れは、一般に額が大きいので、特に念入りに調査されます。会社の方で、安易に回収不能と判断して貸倒処理を行っていたところ、調査によりひっくり返されたというケースも珍しくありません。そこで、貸倒償却について述べておきます。
@税法上の損金算入条件に合致しているか…これを立証するためには「再建放棄通知書」とか「債権者集会議事録」などの関係資料を用意する必要があります。
A回収不能性が立証できるか…債権者に支払能力がないこと、行方不明になっていることなど、興信所の記録や得意先元帳などによって証明します。
B一定期間取引停止の立証はできるか…取引停止後1年以上経っているかどうか。こうした事情を立証するために、売掛金台帳や売掛金残高表、請求書(控)等を整備しておきます。

 

調査に際しての応答心得
調査に際して基本となるのは、この稿を始めるにあたって述べたように、調査を避ける姿勢ではなく、堂々と向っていく姿勢です。調査は早く済ませてもらうにこしたことはありませんが、そのためにも、調査官が必要とする資料の提出や、調査の際の質問には積極的に協力していく必要があることを、まず押さえておいてください。
では、調査官が実施調査にやってきたとき、どう対応すればよいか、その心得と注意事項を述べることにします。

(1)まず、代表者が応対
調査項目の中には、代表者はどんな人物か、また、税務に対する関心度や理解はどうかが重要なポイントの一つとして入っています。
まず、調査官が来たら、代表者が顔を出して一応の挨拶をし、調査に対する理解・協力を示すことです。できれば、1〜2時間は調査に立会ったり案内したりします。
その上で担当者に任せるようにすれば、調査官の心証もよくなるでしょう。調査官の性格も分かり、それに応じた適切な対処の仕方も出来るようになるでしょう。

(2)経営概況などの説明
会社の概況・特色、業界の現況などについて積極的に説明することです。
調査官は、準備調査で、申告に際して提出した事業概況説明書などによってある程度の知識をつかんでいるでしょうが、取扱商品の内容などの詳しいところまでは知らないと思われます。そのための会計処理の問題点なども前もって大づかみに説明しておきます。
なお、説明は、会社の概況や業界の実績は代表者が受持ち、会計処理などの細かい点は担当者が行うようにすると、調査官に好感を与えることにもなるでしょう。

(3)自分の考えに固執するな
調査官は"税務調査"に来たわけですから、すべての税務の立場、税法に基づいて判断します。ところが会社のほうは、どうしても税務的な解釈よりも会社の都合や常識のほうを考えてしまいます。
たとえば、たな卸商・製品の評価損の計上、売掛債権の貸倒償却の判断、損金算入の時期等々…一体に会社側は甘く、税務署は厳しい基準で挑んできます。こちらの解釈もある程度主張して、会社の考えを知ってもらうことは必要ですが、むしろ相手を立てるべきです。意見が食い違うなどして感情的に対立するなどは、論外です。むしろ、こう言った機会に教えを受けるという態度が結果的に良いようです。
"負けて得とる"といった商売人の道もあります。相手の言い分を容れ、余裕を持った態度で接すれば、そこに何らかの合意点も見出されるでしょう。

(4)飲食接待は簡素に
調査官に対する飲食接待については、有名な「コーヒー通達」といわれるものがあります。
しかし、一般的に考えて、時刻がくれば、紅茶やコーヒーくらい出しても良いと思われます。ただ、常識以上のものは、かえって相手に迷惑をかけることになり、時には不信感を起させることにもなりかねませんから、特に初めての顔ぶればかりのときなどは、儀礼的な態度にとどめるよう心得ておいて下さい。

(5)自信のないときは即答を避けよ
調査事項について質問された場合は、明確に答えるべきですが、むだなこと、必要以上のことは喋らないことです。うっかり口をすべらせて新たな問題を起すことがないよう注意して下さい。
また、返答に自信がないときは、決定的な返答はしないことです。
「ちょっと調べさせて下さい。よく調べてから返事します。」とか、「この部分の担当者が不在のため、事情がよくわかりません。明日にでも連絡しますから…」などと答えて、少し時間をもらいます。
心証を悪くするかもしれませんが、単純に処理が間違っていたといったものならまだしも、大きな問題につながっているケースもあります。こうした微妙なものについては、その問題に応じて、言い方に気をつけなければなりませんが、「忘れた」とか「思い出せない」、「今一度調べて見る」といった理由をつけて、回答を先に延ばすしかないでしょう。
殊に、応対者が経理の一係員であるときは、問題によっては上司や代表者と打合わせをしなくてはならないでしょう。税理士にも相談して対処すべきでしよう。

(6)率直な態度に終始せよ
この部分は調査されないだろうなどとタカをくくって、脱税しようとしているとしたら、非常に危険です。いろいろ数字を操作したり、説明の際にウソをついたとしても、最近の税務署の調査システムや、豊富な調査資料によって、不正やウソは必ず発見されるものと心得て下さい。
もし、最初から、発見されてもモトモトという気持ちでやったのであれば、それは因果応報ということで、発見されたときは男らしく率直に振る舞うべきでしょう。その時になってジタバタするのは見苦しいだけです。


〈会計・財務の基礎)
1. 経営者が身に付けるべき経理の知識
2. 簿記とは?
3. 簿記と家計簿の違いは?
4. バランスシートとは?
5. バランスシートの項目
6. 損益計算書とは?
7. バランスシートとは損益計算書の関係
8. 経営者がイメージすべき決算書
9. 税務調査の心構え
10.仕訳辞書




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