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 経営者にとって必要な財務や経理の知識とは?
 資金繰りは別として、細かな経理知識は不要。大事なのは、管理レベル・戦略レベルで「お金の回るしくみ」を理解することです。

世の多くの経営者は、財務や経理の仕事を苦手としています。しかし、経営者としてまったく知らないわけにもいかず、不承不承勉強を始めます。そんなときに必ずぶつかるのが、「いったい何をどこまで勉強すればいいのか」という疑問です。 それでは、財務や経理の仕事のアウトラインを押さえながら、この疑問について考えていきましょう。

 

財務・経理の領域

財務や経理は、会社の資金面を扱う仕事です。いきなり結論めいたことを先取りすれば、経営者にとって必要なのは、「お金の回るしくみ・回らなくなるしくみ」を知ることです。 財務や経理の仕事は、3つの領域に分けられます。

@会計業務、
A資金業務、
B事業コントロールの3つです。

このうち資金業務は、資金調達や資金運用、それと日常的な出納業務をその内容です。言ってみれば、お金そのものを扱う仕事です。  
次に、会計業務は、資金の動きを中心に会社の日々の取引を記録し、それを決算書にまとめる仕事です。税務関連の仕事もこれに含まれます。  残る事業コントロールとは、一段高いところに立って計数面から経営状況を把握し、様々な制度やしくみを構築しながら、あるべき方向に経営の舵取りをしていく仕事です。言い換えれば、お金の回っている状況をモニターし、お金の回るしくみを作り上げていく仕事です。  
3つのうち、会計業務や資金業務は、実務レベル・作業レベルの仕事です。一方、事業コントロールは、管理レベル・戦略レベルの仕事です。会社組織の上では、会計業務や資金業務はスタッフ業務であり、事業コントロールはマネージャーや経営者が担当する仕事です。  なお一般に、この3つの中で会計業務が「経理」、資金業務が「財務」と呼ばれます。中小企業では、これらの仕事は組織上は区別されず、単に「経理」と言ったら、経理と財務の両方を指します。

 

会計知識の幹の部分(財務会計の基礎)

会計には2つの領域があります。財務会計と管理会計です。財務会計とは、「財務報告のための会計」であり、株主・取引先・国などの利害関係者に業績を報告することを目的としています。 一方、管理会計とは、「経営管理のための会計」で、内部的な経営判断のツールとしての会計を指します。管理会計は、財務会計の知識を基礎としていますが、基本的には別領域のものです。
 両者のうち経営者に必要なのは、管理会計の知識です。財務会計については、管理会計を理解するのに必要最低限のレベルで十分です。具体的には、決算書のしくみや読み方が分かるレベルです(一口に、「読める」と言っても様々ありますが・・・)。
 会計業務は、大変に枝葉の多い分野です。税務まで含めたら、それこそ樹海のようなものです。管理会計を理解するのに、枝葉の部分までは必要ありません。枝葉は会計顧問などの専門家に任せておけばいいのです。

 

資金繰り知識(資金繰りの実務) 

経営者に求められるのは、基本的に管理レベルの知識、「しくみ」を知ることですが、こと資金繰りに関しては実務レベルでの知識が必要です。
 なぜなら、資金繰りに間違いは許されないからです。会計のような、単なる「数字」であれば、後になって修正がききます。しかし、資金繰りの失敗はそのまま会社の終焉を意味します。
 仮に、細かな資金繰りまでは直接組まないにしても、自ら、最低3ヶ月先の資金繰りを読めるくらいでないと、会社を「突然死」させかねません。

 

事業コントロールのための財務知識(管理会計・企業財務) 

経営者にとって重要なのは、この経営管理上の財務知識です。この領域は、本などで勉強するときには、更に2つの分野に分かれます。管理会計と企業財務です。 もっとも、両者の境界線は曖昧です。いずれにしても、経営判断に直接絡む問題をテーマとしています。強いて言えば、管理会計は、個別的・短期的な事象や損益関連の項目を扱い、一方、企業財務は、全社的・中長期的な事象やバランスシート(資金の調達と運用)関連の項目を扱います。
 この領域は、財務会計や資金繰りの一段上に存在するものです。したがって、決して易しくはないでしょう。しかし、経営戦略論やマーケティングに比べれば、決して難解というわけでも特殊なわけでもありません。

 

識的に理解できる財務知識

管理会計や企業財務(以下、合わせて財務と言います)は、2つの内容に分類できます。常識的に理解できることと、常識的な判断ではかえって間違えてしまうこと、の2つです。
どちらが多いかと言えば、前者の方が圧倒的に多い。 まず、「常識的に理解できる財務知識」とは、次のようなものです。 ・在庫を増やせばお金が減る。更にそれが売れなければ、事態はもっと深刻になる。

・大きな先行投資をした場合、それを回収できなければ資金は回らなくなる。
・顧客から代金を前払いでもらえば、借入れをせずともお金が回る。  

これらは「知識」というよりは、まさに「常識」と言うべきものでしょう。でも、しばしば経営者は、これらの常識を見失ってしまいます。  
経営者は、大変前向きな人が多い。これは、経営者にとっては必須の要素でありましょう。ただ、ともすれば度を超えて、「前がかり」になりがちです。

特に、起業段階ではその傾向が強くなります。テイクオフには猛烈な助走が必要になりますから、当然だとも言えましょう。  
こうしたときに視野狭窄を起こし、「常識」が見えなくなってしまうのです。結果として、「暴走」になってしまうのです。>  
また、常識に対し盲目になるのは、経営者ばかりではありません。経理担当者だってそうです。足元にしか視野のない事務屋の人間では、全社的な課題を常識的に判断・解決することはできません
結局、こうした面での財務の学習は、全社的な視野を持ち、事業運営のリスクを再認識し、バランス感覚を養うことだと言えます。個別の知識の習得というより、財務的な視点を忘れないようにすることです。 

 

常識の落とし穴 

さて次に、常識では判断を間違えてしまう内容とはどういったものでしょう。 

・売上が2倍になると、利益も2倍になる
・製造原価100の製品を80円で売ったら、必ず損が出る
・売上が増えると資金繰りは楽になる
・企業の格付けは、高ければ高いほどよい(AAAがいちばん望ましい)  

1つ1つについての解説は割愛しますが、これらの命題は、財務的に見ればすべて「否」です。これらが正しいと思って経営判断を下したら、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。  
こうした項目は、数が多いわけではありません。個別に論点をつぶしていけばいいのです。 

財務は、利益を出すための、会社を存続させるための、そして企業価値を高めるための施策を考え、それらを組織に落とし込んで実行していくのが役目です。
経営管理の中枢と言っても過言ではありません。
 経営者は、決して営業や技術の部門責任者ではありません。すべての部門のトップであり、最終責任者です。
であれば、経営管理のための財務知識は必須のものです。 「ベンチャー企業には、財務の分かる人材が不足している」――こんな指摘をしばしば耳にします。ただ、起業時に人材が不足するのは当然のこと。ベンチャーにとっては、経営者自身が唯一最大の経営資源です。「食わず嫌い」せずに、自ら財務知識を身に付けることが、事業を成功に導く途と言えるでしょう。

 




〈会計・財務の基礎)
1. 経営者が身に付けるべき経理の知識
2. 簿記とは?
3. 簿記と家計簿の違いは?
4. バランスシートとは?
5. バランスシートの項目
6. 損益計算書とは?
7. バランスシートとは損益計算書の関係
8. 経営者がイメージすべき決算書
9. 税務調査の心構え
10.仕訳辞書




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