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民事再生法
2001年4月施行

小規模個人再生手続き、給与所得者等再生手続きに期待

《多重債務者の生活再建に、画期的な道》
 2000年秋の臨時国会において、新しく民事再生法の特則として小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続が立法化され、2001年4月より施行されることになりました。

本手続きの制定は、自己破産申立件数が12万件を超え(1999年)、潜在的・予備的破産者やその一歩手前という層を含めると150万人以上とも言われる膨大な層になる中で、今まで、破産か任意整理(調停含む)しか事実上選択肢が無かった多重債務者の生活再建にとって、画期的な意味をもつものであり、かねてから弁護士会としても個人の生活再建を容易にする制度の制定を求めてきたところです。

即ち、自己破産申立てについては、

(1) 本人が自己破産は避けたいと希望するとき
(2) 今の購入した住宅に住み続けたいとき
(3) 今の商売をそのまま維持したいとき
(4) 免責不許可の可能性があるとき
  (ギャンブル、浪費、詐欺的な借入れ、不平等な返済など)
(5) 破産に伴う資格喪失を避けたいとき

などには、躊躇せざるを得ません。他方、任意整理(調停含む)をするためには、分割返済の場合には、利息制限法に引きなおして、3年(最長5年)程度で全額返済することができるか否かが、一つのメルクマールとなっています。

従って、小規模個人再生手続、給与所得者等再生手続の新設は、多重債務者の生活再建について、新しいメニューを用意するもので、今後大いに活用していくことが必要です。

《小規模個人再生手続、給与所得者等再生手続の概要》
(1) 破産手続きをとるか、本手続をとるかは、債務者の選択に委ねられています。

(2)本手続きをとることができるのは、消費者、勤労者、自営業者など個人に限られます。

(3)本手続きにおいては、財産(不動産、車など)については、基本的に維持することができます。最低返済額は100万円もしくは債権額の5分の1のいずれか多い額で上限が300万円とされています。

(4)本手続きをとるためには、負債の全体額を明らかにする必要があり、負債の上限額は住宅ローンなどを除き3000万円とされています。

(5)申立て時に利息制限法のひき直し計算ができない場合には、とりあえず、推測の債権額を書いておき、後日資料を債権者に出させたうえで、利息制限法にもとづいて再計算するために、申立て時に異議を留保しておく必要があります。弁護士を代理人につけない場合には、裁判所が個人再生委員を選任して、債務者の手続上の援助をすることになります。

(6)給与所得者等再生手続は、収入がほぼ定額(サラリーマン、年金生活者など)な者について利用できる特則で、債権者の同意は不要です。その代わりに原則3年間(5年まで延長可)で2年分の可処分所得(収入から生活保護基準をベースにして差引かれる生活費を控除した額)を計画的に返済することになります。

他方、小規模個人再生手続は、定期的な収入の見込みがあれば、自営業者等にも利用できますが、再生計画について債権者数の半数かつ議決権総額の2分の1を超える不同意があれば、認められません。

(7)再生計画を遂行すれば、当然に免責が受けられます。4分の3以上の返済をした時点で不履行になっても、事情により免責を受けられる場合(ハードシップ免責)があります。

(8)住宅ローンについては、過去の不履行部分について、5年以内に弁済する計画を策定できれば、「期限の利益」を回復できます。それが無理でも、10年を超えず、債務者の年齢が70歳を超えない範囲で分割返済期限を延長することができます。

(法務委員会)

民事再生法等の一部を改正する法律案(閣法第一一号)(先議)要旨

本法律案は、住宅ローンその他の債務を抱えて経済的に窮境にある個人債務者の経済生活の再生を迅速かつ合理的に図るための再生手続の特則を設けるとともに、日本国内で開始された破産手続及び更生手続の効力を債務者の外国にある財産にも及ぼす等の措置を講じようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。

一、住宅資金貸付債権に関する特則の新設
住宅ローンを抱えた個人債務者が、住宅を手放さないで再生できるようにするため、当該債権等を担保す るために住宅に設定された抵当権の実行を制限し、次のような再生計画による弁済の繰延べを認める。
 
1 住宅ローンの元本、利息等の全額を、既に弁済期が到来しているものは原則として三年(最長五年)で、弁済期が到来していないものは当初契約どおりに支払う。

2 1の計画を遂行できる見込みがない場合には、最長十年、七十歳まで住宅ローンの支払期限を延長することができる。

3 2の計画を遂行できる見込みがない場合には、当初の三年(最長五年)は、元本の支払額を少なくすることができる。

二、小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則の新設

個人債務者が破産しないで再生できるようにするとともに、債権者にとっても破産の場合よりも多くの債  権回収ができるようにするため、小規模個人再生と給与所得者等再生の二種類の簡易・迅速な再生手続を設ける。

1 小規模個人再生手続

継続的な収入の見込みがある個人債務者で、無担保再生債権の総額が三千万円を超えないものを対象とし、その収入を弁済原資として、原則として三年(最長五年)で、三か月に一回以上は分割して弁済することを内容とする再生計画を作成し、裁判所の認可を得て遂行することにより残債務が免除される。

(1)  債権確定訴訟をすることなく、個人再生委員の意見を聴き、裁判所が評価することによって再生債権の額が確定する簡易な再生債権の調査手続を設ける。
(2)  再生計画案への反対投票が半数を超えなければ、可決があったものとみなす。
(3)  最低限の弁済額として、負債総額の二十パーセント以上(百万円以上三百万円以下)で、かつ、破産した場合の配当額以上を弁済することを必要とする。

2 給与所得者等再生手続

小規模個人再生の対象債務者のうち、サラリーマン等将来の収入を確実に把握できるものを対象とし、その可処分所得二年分以上を原則として三年(最長五年)で弁済する再生計画を作成して裁判所の認可を得て、債権者の多数の同意を不要とし、小規模個人再生よりも更に手続を簡素化する。

 国際倒産法制の整備

国際的に活動する企業等について公平かつ適正な倒産処理を実現するため、破産法、会社更生法、民事再生法等に次のような改正を加える。

1 破産管財人及び更生管財人の財産の管理処分権を債務者の国外にある財産にも及ぼす。
2 同一の債務者について外国倒産処理手続と国内の破産手続等とが並行的に進行する場合に、破産管財人等に相互協力を義務付け、債権者を代理して他方の倒産処理手続に参加する資格を付与する等の相互調整規定を設ける。

3 国際倒産管轄についての規定を設ける。

4 施行期日

この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 

Q&A

Q1
:平成13年4月から施行された個人債務者の再生手続きとはどんなものでしょうか?

A1:中小企業の再生を主眼にした民事再生法(平成12年4月から施行)を、より簡易化(各債権者の積極的同意を不要と するなど)したものです。個人(小規模零細事業主・サラリーマンなど)が、破産を避け、3年間程度の期間に、支払可能な一定の金額を払うことで、残余の債務の支払を免れることができます。

Q2:誰が利用できるのですか?

A2:(会社ではなく)個人の方で、継続的に安定した収入があり、総負債が(住宅ローンを除いて)3000万円を超えない方です。

Q3:この手続きで、債権者に、いくらを、どのくらいの期間、支払えば残余を免除されるのですか?

A3:「小規模個人再生」では、大雑把に言って、3年間、毎月2万7777円(住宅ローンを除く総負債が500万円以下の人)〜毎月8万3333円(総負債1500万円以上の人)を支払えば、残余は免除されます。負債が1000万円の人なら、毎月5万5555円です。
これは、法が、最低弁済額を、総負債のの20%とし、(それが100万円以下でも)最低100万円〜(それが300万円を超えても)300万円を、原則3年間(最大5年)で、弁済するもとしているからです。
注:@最低弁済額は、生命保険解約戻り金や不動産の売却余剰見込みなど、破産をすれば配当できる金額を下回ることはできません。A「給与所得者等再生」の場合は、可処分所得の2年分を3年間で弁済することになります。

Q4:バブル崩壊で地価が下がり転売も出来ず、住宅ローンの支払が出来なくなりました。自宅を手放したくないのですが。

A4:「住宅資金特別条項」は、再生債務者が、住宅ローンの支払意欲はあるが、他の一般債務の負担が多く、支払不能によ り、抵当権実行がされるおそれのある場合、今一度、住宅ローンのリスケジューリング(期間弁済額の変更)をすることで、住宅を守ろうとする制度です。ただし、リスケジューリングといっても、延期期間は、もとの契約から10年を超えずかつ70歳までの期間です。また、不動産価格が下がったことで、ローンの残金をそれにあわせてカットするような制度ではありませんので、注意してください。

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