(法務委員会)
民事再生法等の一部を改正する法律案(閣法第一一号)(先議)要旨
本法律案は、住宅ローンその他の債務を抱えて経済的に窮境にある個人債務者の経済生活の再生を迅速かつ合理的に図るための再生手続の特則を設けるとともに、日本国内で開始された破産手続及び更生手続の効力を債務者の外国にある財産にも及ぼす等の措置を講じようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一、住宅資金貸付債権に関する特則の新設
住宅ローンを抱えた個人債務者が、住宅を手放さないで再生できるようにするため、当該債権等を担保す るために住宅に設定された抵当権の実行を制限し、次のような再生計画による弁済の繰延べを認める。
1 住宅ローンの元本、利息等の全額を、既に弁済期が到来しているものは原則として三年(最長五年)で、弁済期が到来していないものは当初契約どおりに支払う。
2 1の計画を遂行できる見込みがない場合には、最長十年、七十歳まで住宅ローンの支払期限を延長することができる。
3 2の計画を遂行できる見込みがない場合には、当初の三年(最長五年)は、元本の支払額を少なくすることができる。
二、小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則の新設
個人債務者が破産しないで再生できるようにするとともに、債権者にとっても破産の場合よりも多くの債 権回収ができるようにするため、小規模個人再生と給与所得者等再生の二種類の簡易・迅速な再生手続を設ける。
1 小規模個人再生手続
継続的な収入の見込みがある個人債務者で、無担保再生債権の総額が三千万円を超えないものを対象とし、その収入を弁済原資として、原則として三年(最長五年)で、三か月に一回以上は分割して弁済することを内容とする再生計画を作成し、裁判所の認可を得て遂行することにより残債務が免除される。
(1) 債権確定訴訟をすることなく、個人再生委員の意見を聴き、裁判所が評価することによって再生債権の額が確定する簡易な再生債権の調査手続を設ける。
(2) 再生計画案への反対投票が半数を超えなければ、可決があったものとみなす。
(3) 最低限の弁済額として、負債総額の二十パーセント以上(百万円以上三百万円以下)で、かつ、破産した場合の配当額以上を弁済することを必要とする。
2 給与所得者等再生手続
小規模個人再生の対象債務者のうち、サラリーマン等将来の収入を確実に把握できるものを対象とし、その可処分所得二年分以上を原則として三年(最長五年)で弁済する再生計画を作成して裁判所の認可を得て、債権者の多数の同意を不要とし、小規模個人再生よりも更に手続を簡素化する。
3 国際倒産法制の整備
国際的に活動する企業等について公平かつ適正な倒産処理を実現するため、破産法、会社更生法、民事再生法等に次のような改正を加える。
1 破産管財人及び更生管財人の財産の管理処分権を債務者の国外にある財産にも及ぼす。
2 同一の債務者について外国倒産処理手続と国内の破産手続等とが並行的に進行する場合に、破産管財人等に相互協力を義務付け、債権者を代理して他方の倒産処理手続に参加する資格を付与する等の相互調整規定を設ける。
3 国際倒産管轄についての規定を設ける。
4 施行期日
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
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