(1)免責とは自然人たる破産者に対して破産手続による配当によって弁済されなかった残余の債務についてその責任を免除することをいいます。
破産の主目的が債権者の権利実現にあることを前提とし、それに誠実に協力した破産者に対してその特典として免責を与えます。免責制度の目的を直視し、破産者の更生をはかる手続です。
(2)免責申立(法第366条の2以下)
1)申立人 自然人たる破産者
2)申立期間 破産宣告から
@同時破産廃止決定のあった場合
破産宣告決定確定(破産宣告・破産廃止決定の官報掲載の翌日から起算して2週間経過した日)
後1ヶ月以内
A異時破産廃止決定のあった場合
破産廃止決定の官報掲載の翌日から起算して2週間経過した日(決定確定日)まで。
B破産管財人が選任されている場合
破産解止(破産終結決定の官報掲載日)に至るまでの間いつでも申立できます。
C強制和議の提供、同意廃止申立のある場合
棄却決定後でなければ免責申立はできません。
但し、現在、多くの裁判所で破産申立時に免責申立もあわせてするようになっています。
(3)免責の審理
裁判所は、破産者を審尋します。審尋期日を定める決定は公告され、検察官・破産管財人及び免責の効力を受ける破産債権者に送達されます。利害関係人は審尋期日に異議申立をすることができ、裁判所は異議申立人・破産者の意見を聞きます。東京地裁では、現在毎週火曜日626号法定で免責審尋期日を実施しています。
なお、東京地裁では即日面接後交付される出頭カードに必要事項を記入の上、持参します。病気等の正当事由で破産者が出頭できない場合、代理人名義の上申書を免責審尋期日当日に提出すれば足ります。(診断書等の提出は不要)。免責審尋期日までに提出された意見については免責審尋期日に代理人に知らされますので、意見提出者及び意見陳述書に対して1週間以内に代理人名義の反論書又は事情説明書を作成、その写しを直送の上、正体を裁判所に提出することになります。異議申立期間は免責決定日から2ヵ月後になります。平成13年の免責事件番号は破産事件の(フ)の番号に80000を加えた番号です。例えば、平成13年(フ)第1号の免責事件番号は13年(モ)第80001号となります。免責事件についての裁判所に対する問合せは破産事件の(フ)の番号で照会します。
(4)免責の裁判
免責の裁判は、決定の方式で行なわれます。
1)免責申立が適法要件を欠き不適法である場合は申立が却下されます。
2)申立は適法でも、免責を与える理由のない場合、免責を不許可とする事由がある場合は、免責不許可決定がなされます。
3)申立が適法で免責不許可事由のない場合は、免責決定がなされます。
(5)免責不許可事由(法第366号の9)
1)詐欺破産・過怠破産
@法第374条の詐欺破産罪又は法第375条の過怠破産罪に該当する行為があると認められるとき
A破産隠匿・不利益処分に該当する行為
B商業帳簿の不備
C浪費又は賭博行為などの射倖行為
2)詐欺による信用取引
3)虚偽の債権者名簿の提出、財産状態に関する虚偽の陳述
4)破産手続上の義務違骨
@監守違反
A説明義務違反
5)10年以内に免責を受けたこと
(6)一部免責
全ての債権について、免責を不許可とするほどの不正などはないが、、免責不許可事由がある場合には、一部の債権者に対する債務のみ免責を不許可としたり、一定割合に応じて債務のみ免責を不許可とすることが許されるかについては、争いがあります。これを認めた下級審の判決もありますが、その範囲の定め方に合理性があるかなども問題が残されています。現在では、免責手続きの中で、債権者に対し一定割合での配当を行わせた上で、その後に免責を与えるなどの運用が図られていますが、東京地裁ではこのような免責について調査を要する場合、少額管財事件として破産管財人の調査に任せています。
破産者が破産宣告によって受けている行為の権利・資格の制限を除き、その法的地位を回復させることをいいます。破産法自体には公私の権利の制限規定はおかれていませんが、他の法令には種々の制限があり、これらの制限から破産者を解放し、一定の職務に復帰することにより破産者の経済的再起更生をはかる必要があるからです。
(1)当然復権
1)免責決定の確定
2)強制和議認可決定の確定
3)同意破産廃止決定の確定
4)破産者が破産宣告後詐欺破産罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき
(2)申立による復権
破産者が弁済その他により、破産債権者に対する全債務について責任を免れた場合に、破産裁判所に申立、それを認める裁判(決定)により復権します。
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