| 特別清算手続 | 
         
          | 1 特別清算手続とは | 
         
          |  解散後清算中の株式会社について、清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情又は債務超過の疑いがある場合に、裁判所の命令により開始され、かつその監督のもとに行われる特別の清算手続で、通常の清算手続と破産的清算の中間的性質を有しています。債権の確定や否認等の制度はなく、破産ほど厳格な手続でもありません。   | 
         
          | 2 利用目的 | 
         
          | (1)本来型破産に代わる簡易・迅速な手続として利用されます。
 
 (2)対税型
 税務対策の為に利用される場合です。親会社が経営不振の子会社を整理する場合、親会社としては子会社の債権者から債権を買い取るなどして、子会社の債務を整理し、債権者は親会社のみであるようにします。そのうえで債権債務を相殺し、子会社が親会社に対して負担する債務を親会社が免除して清算するのですが、この方法では税務署が子会社に対して免除した債権の損金処理を許さない場合があります。しかし、特別清算の申立がなされれば、債権者は清算会社に対する債権額の50%相当額以内の債権を債権償却特別勘定に繰り入れることができるほか、協定案の可決・認可による債務免除についてはその認可のあった事業年度において損金の額に算入することができますので、特別清算の方法が利用されています。
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          | 3 特別清算手続を利用するのが不適当である場合 | 
         
          |  (1)債権額をめぐって争いがある場合(2)否認権を行使してその財産を取り戻す必要がある場合
 (3)主要財産のほとんどが担保権を実行されている場合
 (4)大口債権者が特別清算手続を利用することに反対している場合
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          | 4 特別清算の申立 | 
         
          | (1) 管轄裁判所  会社の登記上の本店所在地を管轄する地方裁判所
 (2) 申立権利者
 1)清算人  代表清算人、清算人を問いません。代表権のある清算人には申立義務があります。
 2)債権者  債権額を問いません。社債権者も含まれます。
 3)株 主  所有株式数を問いません。
 4)監査役  資本金1億円以下、負債総額200億円以下の監査役には申立権はありません。
 5)裁判所の職権
 裁判所は、会社に特別清算開始原因があると認めた場合は、職権で特別清算の開始決定をすることが
 できます。また、監督官庁からの通告を受けて開始決定をすることもあります。
 
 (3) 申立時期  会社の解散決議後であれば、いつでも可能です。
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          | 5 特別清算の開始要件 | 
         
          | (1)開始原因1)清算の遂行に著しい支障をきたす事情があること
 2)会社に債務超過があること
 3)注文上は規定されていませんが、支払不能も開始原因と考えられています。
 
 (2)特別清算の見込み
 当初から特別清算の見込みがない場合には、手続すべきではなく却下されます。
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          | 6 審理及び裁判 | 
         
          | (1)審理特別清算申立が受理されれば、裁判所は清算人等を尋問します。
 大口債券者の意向を聴取する場合もあります。
 
 (2)裁判
 形式的要件・実質的要件を欠く場合には、決定で却下されます。
 
 (3)係属中の他の手続と中止命令
 裁判所は開始前でも破産手続、再生手続、企業担保権の実行手続の中止を命じることができます。
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          | 7 保全処分 | 
         
          | (1)特別清算開始前でも、会社財産の保全処分、株主の名義書換禁止、発起人・取締役・監査役または清算人の責任に基づく損害 賠償請求権を被保全権利とする財産の保全処分ができます。
 (2)保全処分の申立をなしうるものは特別清算申立権を有するものですが、現に特別清算を申立てたものでなくてもかまいません。
 
 (3)保全処分の内容
 1)弁済禁止
 2)処分禁止
 3)占有移転禁止
 4)株主名義書換禁止
 5)取締役などの財産保全
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          | 8 開始決定の効力 | 
         
          |  1)会社の清算手続は特別清算手続に移行します。2)債権者に対しては、競合手続及び強制執行等の手続が禁止又は中止され、開始決定が確定すれば、中止された
 手続は効力を失います。
 3)相殺禁止
 4)時効の停止
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