(1)破産原因
破産手続を開始するための債務者の財産状態の破産を示すものとして定められた事由
一般的破産原因
支払不能
物的会社及び相続財産に特有の破産原因
債務超過
従って、自然人の場合は、支払不能のみが破産原因となり、物的社会(株式会社・有限会社)及び相続財産については、
支払不能と債務超過が破産原因となります。
@支払不能
全ての債務者に共通する破産原因。
弁済能力の欠乏のため、弁済期が到来した債務を一般的かつ継続的に弁済することができないと判断される客観状態。
・弁済能力の欠乏 財産・信用・労務のいずれをとっても債務を支払う力のないこと。
→ 資産があっても換価が困難であれば支払不能であるが、財産がなくとも信用、収入があれば支払不能ではありません
・弁済能力の欠乏が一般的・継続的であること
→ 一般的とは債務支払のための資力が不足していること。
継続とは一時的な手許不如意を排除する趣旨。
・客観的支払不能
主観的判断は支払不能とは無関係。
A支払停止
それ自体は破産原因ではありませんが、支払不能を確定させる事実
弁済期の到来した債務を一時的・継続的に弁済することができない旨を外部に表示する債務者の行為。
例)不渡手形の発生
銀行取引停止処分
支払えない旨の明示による通知
夜逃げ
債権者が支払停止を立証した場合、債務者側で支払不能できないことが立証できなければ、破産宣告がなされます。
B債務超過
債務額の総計が資産額の総計を超過している状態。
債務額には、期限未到来の債権も含まれます。
物的会社及び相続財産の破産原因として認められています。
これは、自然人の場合は信用・才覚によって経済的危機を脱することができる可能性もありますが、物的会社の場合、会社財産のみが債務の引当となるからです。
相続財産の場合は、最終的に清算されるので、財産の範囲が一定しており、信用・技能も問題とならないので、債務超過も破産原因となります。(相続財産管理人の破産申立義務)。
(2)破産申立
1)破産申立権者
@債権者(法第132条1項)
破産的清算において一番の利害関係人です。申立人の債権は破産宣告の当時に存在することを要し、それで足ります。破産宣告がなされた後に抗告審の裁判があるまでに債権が消滅しても破産原因が解消したと認められる場合のほかは、抗告審においても破産宣告は取消されません。破産申立権者たる債権者とは、破産債権者として破産手続に参加できるものをいい、将来の債権・期限未到来の債権・条件成就前の条件付債権・別除権者も含まれます。
A債務者(法第132条1項)
債務者による早期の申立によって共同担保の減少を防止して、債権者の保護をはかり、強制和議や免責などにより債務者の保護をはかります。債務者による破産申立を「自己破産」と言います。株式会社の場合、取締役会の決議に基づいて破産申立をする場合は自己破産となります。
B債務者に準ずる者(法第133条)
法人に関しての破産申立の場合には、理事・無限責任社員・取締役・清算人などに申立権が認められています。また、これら法人の理事・無限責任社員・取締役・清算人等には法人の債務超過を発見したときの破産申立義務が課せられています。
2)申立の方式
申立は「書面または口頭を似て之を為すことを得」(法第114条)とされていますが、実際には書面により行なわれるのが通常です。
3)破産申立手続の流れ
申立準備 申立書作成 正本1通
管財事件の場合、管財人用として副本1通
債権者申立の場合、債務者用として更に1通
陳述権・債権者一覧表・負債目録・財産目録等作成
管轄 原則 債務者の普通裁判籍所在の地方裁判所(法第105条 専属管轄)
例外 主たる営業所の所在地(法第105条)
相続財産に関する破産の場合は相続開始地(法第106条)
申立 東京地裁の場合、民事第20部で直接受付。
なお、平成13年2月1日から通常管財・少額管財・即日面接の予納金の納付は審問後となりましたので、申立書提出後すぐに即日面接または審問を受けることができます。また、即日面接または審問の担当書記官から保管金提出書と専用振込依頼書を受領、最寄の銀行から振込することもできます。振込後、合同庁舎9階出納第1課保管金係に保管金提出書と振込み後に受領した保管金受入手続添付書を提出、保管金受領証書を受け取ります。
但し、即日面接を希望しない同時廃止事件については、従前どおり申立時に納付する取扱ですので、日銀代理店で現金を納める関係で午前中は11時30分まで、午後は3時までに申立したほうが無難です。(日銀代理店 9時30分から12時、1時から4時)。日銀代理店で現金納付のうえ、合同庁舎9階出納第1課保管金係に受領書を提出、保管金受領証書を受け取ります。
なお、債権者申立破産事件及び民事再生事件以外の自己破産申立事件及び個人債務者再生申立事件では、保管金受領証書の破産部担当書記官への破産部担当書記官への提示、納付の確認は不要となりました。
大阪地裁の場合、第6民事部で直接受付。
申立時間は、午前中(午前9時より12時まで)ですが、午前11時までに提出したほうが無難です。申立書を提出すれば、その日のうちに不足書類などの審査がなされ、翌日に予納金納付のための保管金納付書とともに、不足書類の追完の指示などを記載した書面が交付されます。合同庁舎2階出納課で納付し、保管金受領証書を受け取り、その写しを破産部の担当係に提出することとなります。なお、保管金受領証書のコピーは破産部に備え付けられているコピー機でコピーすることができます。
近時、名古屋・大阪・東京では個人の自己破産の場合、破産申立書と共に免責申立書を提出しておく取扱いです。
審尋期日(審問) 陳述書の記載事項の確認。なお、東京地裁の場合、弁護士代理の申立であれば債務者の
同行は不要です。
(3)東京地裁での運用の変更
@自然人である債務者が不動産を所有している場合
従前、破産管財事件として処理していましたが、@担保価値を超える(概ね1.5倍以上の)担保の設定A他に財産がないときには、同時廃止事件に移行する取扱いです。
A法人である債務者
従前法人であっても資産がないと認められるときには、同時廃止事件に移行の取扱いでしたが、法人の少額管財事件が認められたことに伴い、同時廃止の取扱いはなくなりました。
B弁護士申立即日面接事件 平成11年4月1日から実施
即日面接時間 9時15分から11時30分、13時から14時
即日面接対象事件 弁護士が代理人となって申立てる個人自己破産事件
即日面接時間内に申立できない場合、事務局が申立書持参の場合は、翌日から起算して3日以内(休日を除いて計算)
の即日面接時間に面接できます(保全申立面接の予約に似ています。)
即日面接日
書記官の予備審査経て裁判官が面接後当日5時に破産宣告(面接に債務者本人の同行不要。決定正本郵送の取扱いです)。
代理人の事前準備の充実に応じ、即日面接の再面接は基本的になくなり、面接日に破産宣告できない事件については、少額管財事件に振り分けられ、各担当裁判官の審理に付されます。
なお、即日破産宣告事件については、当日免責審尋期日が指定され(免責申立は破産申立と同時になしておくことになりました)、期日請書の提出も不要です。また、破産宣告・同時廃止決定をなした全事件について債権者に免責に関する照会がなされます。債権者に対する宣告日時・免責審尋期日等の通知及び免責に関する意見照会は申立時に提出された債権者に対しのみ実施され、宣告後に債権者に変更・追加があった場合は裁判所から通知されませんので、代理人より適宜通知することになります。
(運用の拡大―オーバーローン不動産所有の場合も新たに即日面接の対象となりました。)
平成11年10月20日から弁護士が代理人となって申立てる個人自己破産申立事件について、債務者が1.5倍以上のオーバーローンである不動産を所有する事案についても即日面接の対象となりました。その際、破産部所定の上申書を提出する必要があります。また、同上申書において不動産の評価額を記載するにあたり、その算出方法についての根拠を書面として添付する必要がありますが、その添付書面は、以下のとおりです。
1)近隣の取引事例についての複数の取引業者からの電話聴取書
2)複数の取引業者の査定
3)競売の評価書
4)独自の鑑定評価書(正式鑑定・簡易鑑定)
なかでも上記1)については弁護士に対する信頼から不動産会社2社に電話するだけで済むという手間もお金もかからない緩やかな算出方法が認められています。
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東京地裁少額管財事件 平成11年9月20から実施
平成12年12月1日から法人少額管財手続実施
1. 破産法の範囲内で、できる限り手続の簡素化と迅速化を図ることにより、管財事件にかかる時間と費用に関する負担を少しでも軽減し、かつ、法的清算に乗せることにより、適正な運用を図ろうとする手続です。ポイントは、簡素かつ迅速な手続及び低額予納金です。
原則として、少額管財事件に移行した翌週の水曜日午後5時宣告となり、決定正本郵送の取扱いですので出頭不要です。第1回債権者集会(破産宣告後の3ヶ月後)に併せて、債権調査・廃止に関する求意見集会・任務終了集会及び免責審尋期日も開き1回で済ませるようにしました。完報公告も1回で済ませます。(原則として個人の場合2ヶ月、法人の場合3ヶ月にて管財業務終了)。予納金も、完報公告費用以外には一律20万円で、第1回債権者集会までの分割予納も認められております。
なお、関連事件の追加申立書提出時に、「少額管財係に係属中の関連事件があり、追加申立する」旨伝えます。(裁判官による審問は原則としてありません)。受付票と裁判所予納金(完報公告費用)の納付書類を受領し、1週間以内に納付手続を済ませます。
2. 対象は代理人申立事件に限られます。
3. 事件の類型
(1)個人少額管財事件
1)差押解除型−給料等が差押えまたは仮差押えを受けている場合
2)差押回避方−給料等が差押えまたは仮差押えされる可能性がある場合
3)偏頗弁済方−認否権の行使により財産を取り戻す必要がある場合、また、否認権行使の可否を調査する必要が
ある場合
4)不利得型 −利息の引直し計算による不当利得返還請求権の行使を必要とする場合
5)免責調査型−免責不許可事由の存在が明らかな破産者が裁量免責を受けるため、誠実な破産者であるという調
査報告が必要な場合
6)生保等清算型−生保の解約返戻金、現金及び預貯金等の財産が20万円以上見込める場合
7)調査型−事実関係や財産状態が明らかでなく、一定の期間の調査を要する場合
(2)法人少額管財事件
1)法人併存型−個人と同視できる法人で個人と共に法的生産をする必要があると判断される場合
2)法人単独型−ほとんど資産がない法人で代表者とは別に法的清算をする場合
3)法人清算型−若干の換価業務が予想される法人を法的清算する場合
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(4)大阪地裁の同時廃止事件の迅速化 平成12年4月3日から実施
一定の要件を満たす事件について、申立日からその翌々開廷日までの間に迅速に破産審尋が行なわれ、特に問題がない限り、審尋当日に破産宣告がなされます。
要件 1)不動産を所有していない負債総額500万円程度までの同時破産廃止申立事件で
2)弁護士が代理しており
3)迅速化希望がある場合
手続の流れ
申立日の翌開廷日・翌々開廷日の午前10時30分から午後1時30分までの間、審尋期日を打ち合わせ、指定を受けます。なお、午前10時までに受付を済ませれば、申立日の午後1時から1時30分までの間審尋期日の指定を受けることも可能です。
迅速化事件においては、申立書及び添付書類だけでは不明な事柄について審尋の際の説明によって事実確認をし、疑問点が解消されれば、可能な限り書面の追完を求めずに、審尋当日午後5時に破産宣告がなされます。
(5)破産申立に対する審理
1)裁判所はまず申立が申立権のある者により管轄権のある裁判所に対してなされたか、債権者が申立てた場合に債権の存在及び破産原因の疎明がなされたかなどの形式的な申立の適用要件について審理します。要件が認められれば、費用の予納が命じられます。
2)申立が適用要件を充足し、費用が予納された後、裁判所は破産手続を開始すべき実質的要件である破産原因があるかどうかを審理します。
破産宣告のための審理は、迅速性及びプライバシー保護の要請から口頭弁論を開かずに行なうことができます。(法第110条1項)。また、裁判所が職権をもって破産原因を調査できます。(法第110条2項)
但し、実務上債権者が十分に意見を述べ、主張立証するため債務者に対する審理(審尋)を行なう場合もあります。
(6)破産宣告
破産申立に対する審理により、破産原因があると認められた場合には、破産裁判所において破産宣告がなされます。破産宣告は決定の形式で行なわれ、書面でなされます。
通常主文は「債権者某を破産者とする」という形になります。
破産宣告決定には、宣告年月日のみならず、宣告の時間も記載されます。これは、破産宣告の効力は判決等と異なりその宣告の時から即時に発生するため(法第1条)、その時点を明らかにする必要があるからです。
破産宣告決定がなされると、決定は官報に公告されます。官報に公告されれば、利害関係人に対する送達の効力が発生することになります。
※同時処分 破産裁判所が破産宣告と同時になさなければならない処分
@破産管財人の選任
A破産債権届出期間の決定
B債権者集会期日・債権調査期日の指定
※付随処分 破産裁判所が破産宣告後直ちにまたは遅滞なくなさなければならない処分
@破産宣告決定の主文、同時処分によって定められた事項の公告(法第143条、145条)
A登記、登録の嘱託(法第119条、120条、124条)
B郵便物管理嘱託(法第190項)登記簿上の本店所在地と異なる場合注意
C検察官への通知(法第125条、144条)
D本籍地への通知(昭和30年2月2日最高裁民事局長通知)
E主務官庁への通知(法第125条)
F債務者に対する債務の弁済、財産引渡の禁止
G管財人に債務負担、財産所得の事実を届出るよう催告
H知れたる債権者への通知(法第143条2項)
(7)破産宣告の効果
1)財産管理諸文献(帳簿など)の管財人への移転
2)破産債権者の個別的権利執行の禁止(例外 別除件)
3)人的効果
法 人 破産宣告により解散
自然人 権利能力・行為能力には影響はありません。選挙権も失いませんし、戸籍への記載もありませんが、弁護
士・会計士・取締役等については破産法以外の法律により資格を喪失する旨の規定があります。
4)身分上の制約
説明義務 破産者は管財人、債権者集会の求めに応じて、資産・負債の状況・破産に至った事情などについての説明
義務があります(法第153条)
居住制限 破産者は裁判所の許可なく転居することはできません(法第147条)。法人の代表者も同様です(法第152
条)
引致、監守 裁判所は必要と認めるときは破産者の引致を命ずることができ(法第148条)、また逃亡・財産隠匿等のお
それがあるとき、裁判所は監守を命じることができます。(法第149条)
通信の秘密の制限
破産宣告がなされると、破産者に対する郵便・電報については破産管財人宛に転送されることとなり、破産管財人は転送されてきた郵便物を開披することができます。(法第190条)。
※身分上の制約については法人の理事・代表取締役についても多くが準用されています。
5)株式会社の代表取締役
株式会社が破産宣告を受けた場合、代表取締役が必要であるか否かについては争いがありますが、破産宣告に対する抗告申立、強制和議の提供などの手続が認められている以上株式会社が破産宣告を受けた場合も代表取締役は必要と考えられています。ただ、会社と取締役との間の関係は、商法上委任の関係によるものと規定されているところから、会社が破産宣告を受けた段階で、委任関係が終了するのではないかという問題がありますので、注意を要します。
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